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“両耳付き”の難題—理想のレジンテーブル材を求めて

タモの耳部分のアップ。杢目の流れと木肌の質感が美しく浮かび上がっている。 アッシュ(タモ)
ナチュラルな耳の形と立体的な杢目が際立つタモ材。レジンとのコントラストが楽しみな素材です。

木材探しの一日:2枚のレジンテーブルオーダーに向けて

本日は、現在オーダーをいただいている2枚のレジンテーブルのために、いつもお世話になっている材木屋さんへ行ってきました。どちらもお客様のこだわりが詰まった特別なテーブルになる予定で、どの木材を選ぶかによって印象が大きく変わります。木の表情、杢目の流れ、耳のライン、そしてレジンとのバランス。そのすべてが完成品の個性を決める重要な要素です。

ブラックウォルナットは順調に理想の一枚を発見

落ち着いた色味と表情豊かな杢目

まず一つ目のオーダーは、根強い人気を誇るブラックウォルナットのレジンテーブル。

ブラックウォルナットの無垢板。メジャーで幅を測定している様子。
幅およそ300mmのブラックウォルナット板。深みのある色合いとしっかりした木目が魅力です。

深みのあるブラウンと美しい杢目が特徴で、使い込むほどに味わいを増していく木材です。今回は幸いにも、材木屋さんに到着してほどなく、理想的な板に出会うことができました。

レイアウトを決めるための撮影

板を並べておおよそのレイアウトを検討しながら、いくつかのパターンで撮影。
レジンの流れる位置、木の中心線、耳の角度などを慎重に確認していきます。撮影した写真はすぐにお客様へお送りし、イメージのすり合わせを行います。

ブラックウォルナットの両耳付き板を測定中。レジンテーブル用に寸法確認を行っている。
両耳を残したブラックウォルナット板の幅を測定。仕上がり寸法を考慮しながらレイアウトを検討しています。

「このレイアウトでお願いします」とOKをいただければ、いよいよ製作スタートです。完成をイメージするだけで、こちらまでワクワクしてきます。

もうひとつのオーダー──“両耳付き”という難題に挑む

希望は幅800mm、両耳付き

もう一枚のテーブルは少し難易度が高い。
お客様のご希望は「タモやナラ、クリなど淡色系で幅800mmの両耳付きレジンテーブル」。
つまり、木材(300mm)+レジン(200mm)+木材(300mm)=全幅800mmという構成になります。

この条件、実はとても珍しいのです。
幅300mmほどで両耳が残っている板というのは、用途が限られているため市場にあまり出回りません。

タモの耳部分のアップ。杢目の流れと木肌の質感が美しく浮かび上がっている。
ナチュラルな耳の形と立体的な杢目が際立つタモ材。レジンとのコントラストが楽しみな素材です。

多くの場合、両耳付き材は幅が広すぎたり、逆に耳を落としたフラット材が主流。そのため、まさに“ニッチ”なサイズ感の木を探すことになります。

材木屋さんとの情報戦

何軒もの材木屋さんや市場に問い合わせをかけてみると、
400mmならあるよ
片耳なら在庫がある
といった回答が返ってきます。
「惜しいけれど、理想のサイズではない」──そんな状態がしばらく続きました。

しかし今回お世話になっている材木屋さんで、ようやく条件に近いタモ材を発見。思わず「これだ!」と声が出るほど、色味も杢目も美しい一枚。

タモの両耳付き無垢板。幅広で美しい杢目が特徴のレジンテーブル用素材。
レジンテーブル製作用に選定中のタモ材。両耳付きの美しいラインが特徴で、ナチュラルな表情が際立ちます。

ただし問題は“長さ”。なんと6メートルもあるのです。必要なのは1.5メートルほど。4倍近い長さとなれば、仕入れ値も大きく跳ね上がります。

コストとデザインのバランスを見極める

長尺材をどう使うか

このようなケースでは、1枚を購入して残りを別のプロジェクトで活かすという選択肢もあります。木材は一度出会ったら次がないことも多く、「今あるうちに確保する」という判断も重要。

タモの耳付き板と他材の比較。表面の色味や杢目を確認している様子。
タモ特有の淡い色味と、他材の深いブラウンを比較。使用部位によって表情が変わることを確認しました。

ただし、予算やお客様のご希望とのバランスも考えなければなりません。レジンテーブルは一品一様。素材の良さを活かしながらも、価格を最適化するのがプロの仕事です。

撮影とお客様確認

こちらの材も何枚か角度を変えて写真を撮影。荒材のため仕上がった色調が分かりにくいので無垢フローリングを添えてお客様に完成イメージを固めていきます。写真をお送りし、お客様の承認をいただければ、こちらも製作工程に進む予定です。

レジンテーブルづくりは「素材との出会い」から始まる

どんなに技術があっても、素材選びを誤れば理想の仕上がりにはなりません。特に天然木はひとつとして同じものがない。
木の表情、節の位置、耳の形──それらすべてが偶然のアートです。だからこそ、木を選ぶ瞬間はいつも緊張と高揚感が入り混じります。

「これしかない」と思える材に出会えたとき、その瞬間からレジンテーブルの物語が始まります。

こだわりの一枚を形にするために

今回は、ブラックウォルナットとタモやナラ、クリなど両耳付き材という、全く性格の異なる2枚の木を探す一日でした。
一つはスムーズに理想の材が見つかり、もう一つは希少材ゆえの苦戦。
それでも、「お客様の理想を形にするために妥協しない」という姿勢が、最終的には最高の作品へとつながります。

レジンテーブルは単なる家具ではなく、素材との出会いと物語を楽しむ“作品”。
今回の2枚も、どちらも間違いなく印象的な仕上がりになる予感がします。

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