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時代遅れと言われたFJLが、今はお洒落。──インドネシアチークが教えてくれた“木を無駄にしない美しさ

FJLタイプのインドネシアチーク無垢フローリング表面。色の濃淡や接ぎ目の表情が見える。 お役立ち情報
ひとつひとつ異なる木目や色調が織りなす温かみ。FJLタイプならではのランダムな継ぎ目が、素朴で自然な表情を生み出しています。

FJLとは?無垢フローリングの“もうひとつのかたち”

かつての木材業界では、FJL(フィンガージョイントラミネート)と聞くと「廉価版」「代替材」といったイメージを持つ人が多かったでしょう。
しかし近年、デザインやサステナブルの視点からこの素材が見直されつつあります。

FJLは短い木片を繋ぎ合わせた“寄せ木の知恵”

FJLとは、小さな木片を指先のように噛み合わせ、接着して一枚の板に仕上げる技法。
製材時に出る端材を無駄なく活用することで、木を一本残らず使い切る知恵の結晶です。
その昔、僕が海外の工場を訪れていた頃、このFJLタイプを「抱き合わせで仕入れてほしい」とよく頼まれたものです。
彼らにとって、端材が売れることは歩留まりの向上そのもの。
けれど当時の日本市場では、FJLは人気がなく、正直言えば少し扱いに困っていました。

「長い一枚板が高級」という価値観の時代

当時の住宅市場では、「長尺で継ぎ目のない無垢こそ上質」という考えが主流でした。
FJLのように接ぎ目が多い板は「安っぽく見える」とされ、チークやマホガニーのような高級材でも、FJLになると一気に評価が下がってしまう。
しかし今振り返ると、その考え方自体が非常に“時代的”だったのだと感じます。
均一さを求めすぎて、木が本来持つ個性や温もりを置き去りにしていたのかもしれません。

再評価されるFJLの美しさ|“不揃い”が描く自然のリズム

年月を経て、あの頃「時代遅れ」だと思っていたFJLを今あらためて見ると、まるで違う表情に見えます。
それは決して欠点ではなく、“味わい”だったのです。

FJLタイプのインドネシアチーク無垢フローリングの断面。小さなピースを集成した構造がわかる。
小さなピースを組み合わせて製作されたインドネシアチークのFJLタイプ無垢フローリング。
端材を活かしたサステナブルな素材ですが、日本ではあまり見かけなくなりました。

寄せ木のような構成が空間にリズムを与える

FJLの最大の魅力は、その“継ぎ目”です。
一枚の中に複数の木片が組み合わされていることで、木目や色合いが微妙に異なり、独特のリズムを生み出します。
その表情は、人工的な均一感にはない温かさを持ち、空間に自然な揺らぎを与えます。
北欧家具やミッドセンチュリーデザインのように、素材の個性をそのまま生かす考え方が広まる中で、このFJLのパッチワーク的な表情はむしろ「お洒落」に見える時代になりました。

細幅の無垢フローリングが空間を引き締める

FJLタイプには細幅の仕様が多く、これもまた現代のインテリアに合うポイントです。
4列で幅150mm前後のフローリングは、空間をすっきり見せ、上品な印象を与えます。
マンションリノベーションや小規模カフェなどでは、あえて細幅FJLを採用することで、床全体に繊細な表情が生まれます。
“広幅が高級”という固定観念を外せば、FJLの世界は一気に広がります。

FJLはデザイン次第で“時代遅れ”から“モダン”へ

FJLがかつて人気を失った理由のひとつに「見た目の不統一」があります。
確かに、無塗装のまま施工すると、継ぎ目の目立つ印象になりがちです。
しかし、それを“欠点”ではなく“表情”と捉えた瞬間、FJLはまったく違う顔を見せます。

塗装と照明で生まれ変わるFJL

例えば、オーク系のFJLにウォルナット色の自然オイルを塗ると、木のトーンが整い、継ぎ目のコントラストが柔らかくなります。
マットな塗装で照明を反射させると、面ごとの陰影が美しく浮かび上がり、上質なクラフト感が生まれます。
ヨーロッパではこうしたFJL構造をデザインの一部と捉え、什器や壁材、天井材としても積極的に採用しています。

“もったいない”をデザインに変えるという発想

FJLは「端材の寄せ木」。
かつては余りものと見なされていたものを、デザインとして昇華させた発想です。
それは、木を一本も無駄にしないという思想の現れであり、サステナブルな時代にふさわしい価値観でもあります。
ただの再利用ではなく、「美しく使い切る」こと。
それこそが、現代のインテリアが求める本当の豊かさです。

エコロキアが考える“FJLのこれから”|不便を楽しむという贅沢

エコロキアでは、「不便を楽しむ」という考えを軸にしています。
FJLタイプのような素材は、まさにその象徴です。
少し手間がかかる、少しクセがある。
けれど手をかけるほどに愛着が湧き、使うほどに味が出る。
そうした時間の経過を楽しむことこそが、“無垢”の醍醐味だと考えています。

木を余さず活かす、それが未来のものづくり

無垢材を一枚板だけで語る時代は終わりました。
端材を寄せて生まれるFJLにも、確かな美しさと温かさがあります。
均一さではなく、個性とリズム。
それをどう空間に調和させるかが、これからのデザインの腕の見せどころです。

“時代遅れ”ではなく“未来の素材”へ

今やFJLは、単なる代替材ではなく、価値ある選択肢です。
一枚板には出せない複雑な表情を楽しみ、木の命を最後まで使い切る。
それはエコロジーの観点だけでなく、心の豊かさにもつながります。
「もったいない」を美しく、「端材」を主役に。
FJLの魅力は、これからますます広がっていくでしょう。

FJLは“再評価すべき無垢フローリング”

FJLタイプの無垢フローリングは、時代遅れどころか、いまや“次のスタンダード”になりつつあります。
デザインの工夫次第で、端材の寄せ木は洗練された空間を生み出し、木の魅力を再発見させてくれる。
インドネシアチークのような深みある樹種なら、その個性がより際立ちます。

無垢フローリングの世界は、「木目を揃える」だけではありません。
小さなピースを集めて一つの面を作る──それもまた、人と木が共に生きる美しい形です。
FJLにもう一度、光を当ててみませんか。

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