長年の使用でくすんだ花梨フローリングが再生を迎えるまで
高級木材「花梨」が持つ美しさと経年変化
花梨(カリン)は東南アジア原産の広葉樹で、赤褐色の美しい木肌と重厚感が特徴です。
硬度が高く傷に強い反面、年月とともに表面のウレタン塗装が劣化し、艶が失われていきます。今回ご依頼いただいたのは芦屋市岩園町の戸建て住宅。不動産会社様を通じて「床をきれいにして再販売したい」とのご要望でした。施工前の状態は、花梨らしい赤味がくすみ、日焼けと汚れが入り交じったマットな質感。木自体はまだ健在でしたが、表面の仕上げが劣化しており、再塗装により再生可能な状態でした。

研磨による下地づくりが美しさを左右する
フローリング再生の第一歩は研磨です。花梨のような硬質材は、サンダーの番手選びや研磨方向に細心の注意が必要です。粗研磨で古い塗膜を除去し、中研磨・仕上げ研磨で木目を均一に整えます。

研磨を重ねるごとに、赤みが徐々に戻り、まるで眠っていた木が呼吸を始めるよう。花梨特有の光沢が復活する瞬間は、職人にとって何度見ても感動的です。
研磨で蘇る木目と色艶の違いを比較
研磨前後でここまで変わる|ビフォーアフター比較
左が研磨前、右が研磨後の比較写真を見ると、その差は一目瞭然です。

研磨前は表面が乾いて白っぽく、木目が霞んでいましたが、研磨後は赤褐色が濃く浮かび上がり、花梨特有の深い色調が蘇っています。経年で埋もれていた杢目が再び輝きを取り戻す瞬間は、まさに再生。無垢フローリングの魅力は、この「削って再生できる」点にあります。合板フローリングでは不可能なこの工程こそ、天然木の強みと言えるでしょう。
部分的な研磨の際に注意すべきポイント
部分補修の場合、旧塗膜との境界が残らないよう段階的に研磨を行います。特に花梨は導管が細かく、研磨ムラが出やすいため、研磨後の下地の均一さが最終仕上げの美しさを大きく左右します。研磨しすぎると木の厚みが減ってしまうため、0.3〜0.5mm単位の繊細な作業が求められます。

職人が手の感覚と光の反射を頼りに仕上げていく作業は、まさに木と対話する時間です。
仕上げに選んだ自然塗料「Kreidezeit」の魅力
環境にも人にも優しいドイツ製自然塗料
研磨後の素地は非常にデリケート。ここでどんな塗料を選ぶかが、木の寿命と質感を左右します。今回採用したのはドイツ・プラネットカラー社の自然塗料「Kreidezeit」。

亜麻仁油を主成分とした植物由来のオイルで、木が呼吸できる仕上がりを保ちながら、美しい艶と撥水性を両立します。揮発性有機化合物(VOC)を含まないため、シックハウス対策としても有効。小さなお子様やペットがいる家庭にも安心しておすすめできる塗料です。
花梨材との相性と塗装工程のこだわり
花梨のように油分を多く含む樹種は、塗装前に軽く脱脂を行うのがポイント。

表面にオイルを均一に塗布し、半乾きの状態でウエスによる拭き取りを行うことで、ベタつかず自然な艶を引き出せます。乾燥後には、光の角度によって変化する深い色味が現れ、まるで新しい命を吹き込まれたような輝きに。
Kreidezeitは時間が経つほど艶が落ち着き、より高級感のある表情に育っていきます。
施工の流れと職人の手仕事
部屋の奥から順に丁寧に塗り進める
塗装作業は、部屋の奥から手前へと計画的に進めていきます。これは、塗りムラや踏み跡を防ぐための基本的な手順。

職人が腰をかがめながら、一定の速度でオイルを塗布していく姿はまさに熟練の技です。Kreidezeitは乾燥が早いため、塗布後すぐに拭き取り工程へ移行しなければなりません。その一瞬の判断力とスピードが、仕上がりの美しさを左右します。
仕上がりの確認と自然乾燥の工程
塗装後は、通気を確保しながら自然乾燥させます。人工的に熱を加えるよりも、ゆっくりと時間をかけることで、オイルが木の導管に浸透し、より深い艶が生まれます。

乾燥後の表面はしっとりとした手触りで、歩くたびに足裏から木の温もりを感じられる仕上がり。人工的な光沢ではなく、自然由来の“やさしい艶”こそが無垢フローリングの醍醐味です。
再生された花梨フローリングがもたらす新しい価値
室内全体を明るく上質に変える力
研磨と再塗装を終えた花梨フローリングは、まるで新築当時のような美しさを取り戻しました。光を柔らかく反射する床面は、空間全体に上質な印象を与えます。

特に花梨材は経年とともに赤みが深まり、年月が経つほど味わいを増していく樹種。時間をかけて育てるように、住まいとともに変化を楽しめる点が魅力です。
「研磨で再生できる」=「長く使える」無垢の価値
無垢フローリングの最大の利点は、削って再生できることです。今回のように表面が劣化しても、木の厚みがある限り何度でも蘇ります。合板フローリングのように張り替える必要がなく、環境負荷の軽減にもつながります。見た目の美しさだけでなく、資源を大切にするサステナブルな選択としても、無垢フローリングの価値は年々見直されています。
よくある質問
- Q無垢フローリングの研磨はどのくらいの頻度で必要ですか?
- A
使用状況によりますが、一般的には10〜20年に一度程度が目安です。花梨やオークなど硬質材の場合、表面の摩耗が少ないためより長持ちします。小さな傷や艶の低下が気になる程度であれば、部分的な再塗装でも十分再生可能です。
- Q家具を動かさずに研磨や再塗装はできますか?
- A
エコロキアの「ムクリペ」では、家具を完全に移動できない環境でも部分施工が可能です。施工範囲を分けて作業することで、住みながらでもフローリング再生を行えます。特に賃貸物件やリフォーム前の物件でも好評です。
- QKreidezeitのような自然塗料はどんな特徴がありますか?
- A
Kreidezeitはドイツ製の自然塗料で、植物油や天然顔料を主成分としています。木が呼吸できる仕上がりで、化学物質を含まないため安全性が高く、小さなお子様やペットのいるご家庭にもおすすめです。塗り直しのたびに艶が増し、経年変化を楽しめます。
- Q花梨(カリン)フローリングの研磨費用はどのくらいですか?
- A
面積や状態により異なりますが、目安として1㎡あたり4,000〜6,000円程度です。花梨は非常に硬い材のため、他の樹種に比べて少し施工時間がかかりますが、その分仕上がりの美しさは格別です。お見積もりは無料で承っております。
- Q研磨後のメンテナンスはどのようにすれば良いですか?
- A
再塗装後は乾拭きが基本です。水拭きをする場合は、固く絞った雑巾で行いましょう。市販のワックスや化学洗剤は使用せず、Kreidezeitなどの自然オイルで定期的にお手入れすることで、美しい艶を長く維持できます。

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