理想を描くという創作のかたち
偶然ではなく、思い描くラインを
今回のレジンテーブル制作体験では、受講者の方がアフリカンブラックウッドを使って制作に挑まれました。
中心を流れるレジンは、深みのあるネイビーから透明感のあるクリアへと変化するグラデーション。その美しい色の移ろいを、偶然に任せるのではなく、自分の理想とするカーブで表現したいという強い想いを持たれていました。硬化後に型枠から外し、裏面に理想のラインを描き込みながら再度流れを整える姿勢に、作品へのこだわりと探究心を感じました。
“思考の線”を形にするという挑戦
一般的に、レジンの流れは温度や粘度、流し込む角度によって自然に変化します。

偶然ではなく、意志をもって流れを操る真剣な時間です。
その“偶然”を楽しむのもレジンアートの醍醐味です。しかし、今回の受講者はそこにあえて意志を加え、自らの感性で形を導こうとしていました。どこでネイビーが溶け、どこでクリアへと変化していくのか。その一つひとつを想像しながら描く姿は、まるで絵画のよう。レジンを操る筆の先に、確かな思考のラインが宿っていました。
自分の理想を追う美学
“偶然”を超える美しさ
僕自身は、自然のままに流れを任せる造形に魅力を感じます。
けれど今回の作品を見ていると、「作為」もまた美しさのひとつなのだと気づかされます。

偶然に頼らず、自分の感性を信じて形にする姿勢が、この作品に深い物語を刻んでいます。
偶然に委ねる美と、意志を持って創り上げる美――どちらも同じ「自然との対話」なのかもしれません。受講者が描いたラインは、単なる装飾ではなく、素材と真剣に向き合った結果として生まれた“意思あるデザイン”でした。
仕上がりを待つ時間も作品の一部
再び硬化を待つ間、どのような表情に仕上がるのかはまだ分かりません。
けれど、この時間こそがものづくりの醍醐味。結果よりも過程に意味があり、手を加えたことで見えてくる発見や驚きが、次の作品へと繋がっていきます。レジンテーブル制作体験とは、完成品を得るだけでなく、「自分の感性を確かめる体験」でもあるのです。
アートとしてのレジンテーブル
意志のあるデザインは“個性”になる
レジンテーブルは、単なる家具ではありません。
木とレジンが交わる一瞬の流れを作品に閉じ込める“アート”です。受講者が描いた理想のラインは、その人だけの感性が反映された唯一無二の作品。たとえ同じ材料を使っても、手の動きや思考の癖が異なれば、まったく違う表情が生まれます。これこそがレジンテーブルの面白さであり、体験型の魅力でもあります。
正解のない世界で、自分の答えを描く
今回の制作を通じて感じたのは、レジンテーブルづくりに「正解」は存在しないということ。
偶然を楽しむのも正解、自分の理想を貫くのも正解です。重要なのは、素材と真摯に向き合い、想いを込めること。

思い描く曲線を追い求める集中の中で、レジンは少しずつ思考と感性の延長線になっていく。作品に“意志”が宿る瞬間です。
受講者が描いた一本のラインには、偶然では生まれ得ない“意志”があり、それこそが作品をアートたらしめる最大の魅力でした。
静かな情熱を感じる時間
レジンテーブル制作体験は、完成品をつくる場ではなく、自分の中にあるイメージを形にする時間です。
今回の受講者のように、「偶然」に委ねず、思い描いたラインを丁寧に追いかける姿勢は、まさにアートへの探求そのもの。
木と向き合い、素材と対話しながら、自分だけの表現を見つけていく――その過程こそが、作品を特別なものにしてくれます。

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