サーモ加工とは何か?
自然素材を科学で進化させた「熱改質木材」
サーモ加工とは、木材を180〜220℃の高温環境で酸素を遮断しながら加熱処理することで、木の持つ細胞構造を安定化させる技術です。薬剤を一切使わず、水蒸気や窒素で酸化を防ぎながら熱を与えることで、木の中のヘミセルロースが分解し、水分を吸収しにくい構造へと変化します。その結果、寸法安定性が高まり、反りや収縮、膨張といった「木材特有の動き」が大幅に軽減されます。
さらに、熱処理によって木の色合いが深いブラウンに変化し、高級感のある外観をもたらします。杉や桧のような針葉樹も、まるでチークやウォルナットのような表情を見せるため、デザイン性にも優れています。まさに「自然と科学の融合」によって生まれた次世代の天然木といえるでしょう。
サーモ加工の起源と進化
この技術のルーツは北欧フィンランドにあります。寒冷地での外装材やデッキ材として、薬剤に頼らずに耐久性を高める方法として研究が始まりました。1990年代以降、環境負荷の少ない木材改質技術として世界的に広まり、現在では「ThermoWood®」という商標ブランドとして確立。日本でもエコロジー意識の高まりとともに、外装・内装問わず採用が増えています。サーモ加工は単なる熱処理ではなく、「持続可能な木材活用の解答」として注目されているのです。
サーモウッドのメカニズム
含水率を安定化させる「細胞構造の変化」
木材は本来、周囲の湿度によって水分を吸放出し、それに伴い寸法が変化します。サーモ加工では、この原因となるヘミセルロースの分解によって水分と結合しにくい構造へと変化します。その結果、含水率の変動幅が小さくなり、湿度の高い日本の気候でも安定した状態を保ちます。
たとえば、一般的な杉材では湿度変化により±5%程度の寸法変化が起こるのに対し、サーモ杉では約1〜2%に抑えられるというデータもあります。これは床材や外壁材として使用する際に「狂い」「反り」を大幅に軽減する効果をもたらします。
腐朽菌・虫害に強くなる理由
木材腐朽菌は、木の中に含まれる栄養分である多糖類(特にヘミセルロース)をエネルギー源として繁殖します。サーモ加工によってこの成分が減少するため、菌の活動が抑制され、結果的に腐りにくくなります。また、樹内の水分が抜けることでシロアリなどの虫害にも強くなる傾向があります。防腐剤や薬剤を使用せず、自然な方法で耐久性を高める点が、サーモウッドの大きな特徴です。
サーモウッドの魅力と実用性
美しい色調と素材感の変化
熱処理によって、木材は内側からカラメル化反応を起こし、独特の深みあるブラウンカラーに変化します。特に桧は黄金色から琥珀色へ、杉は赤みを帯びたブラウンへと変化し、無塗装でも高級感を感じさせます。さらに、木肌が引き締まり、表面の手触りもなめらかになります。光の当たり方で陰影が生まれるため、床や壁、天井など、どの部位に使っても空間を豊かに彩ります。
メンテナンス性の高さと経年変化
サーモウッドは塗装の吸収性が均一で、オイルや自然塗料との相性が抜群です。表面の導管が引き締まっているため、汚れが染み込みにくく、日常的なメンテナンスが容易。屋外で使用する場合も、未塗装のままでも10年以上は耐候性を維持します。経年によってグレイッシュに変化しますが、それもまた味わいとして楽しめる素材です。
杉と桧のサーモウッド、それぞれの個性
サーモ杉:軽さと柔らかさを活かした内装材
サーモ加工によって、杉特有の軽さと柔らかさを保ちつつ、寸法安定性が向上します。柔らかい材質のため踏み心地が優しく、温かみのあるフローリングとして人気があります。

表情豊かな木目がより際立ち、内装材やサウナなど湿度変化の大きい空間にも適しています。
また、赤身と白太のコントラストが強調され、木目がより際立つのも魅力です。サウナや内装パネルなど、温度・湿度の変化が激しい空間にも適しています。
サーモ桧:高耐久と上品な香りを両立
桧は元々耐久性が高い木材ですが、サーモ加工によりその特性がさらに強化されます。表面の油分がほどよく引き締まり、撥水性が増し、虫害に強い。また、独特の芳香成分ヒノキチオールは、熱処理後もほんのりと残るため、リラックス効果を持つ香りを楽しめます。

耐腐朽性が高く、外装材や浴室空間にも最適な高機能素材です。
外装材やバスルームの壁材など、水に関わる用途でも安心して使用できます。
サーモウッドの今後と持続可能性
環境にやさしい木材改質技術
サーモ加工は薬剤を一切使用せず、熱と水だけで耐久性を高める環境負荷の低い技術です。化学処理材に比べて廃棄時のリサイクルが容易で、人体にも安全。
ヨーロッパではすでに外装・デッキ材のスタンダードになっており、日本でも環境建築やサステナブルデザインの観点から採用が増加しています。
次世代建築への広がり
エコロキアでも、無垢の魅力を損なわずに高耐久を実現する素材として、サーモ杉・サーモ桧を積極的に提案しています。特に屋外デッキ、外壁、内装天井材、サウナ空間など、多様な用途で導入が進んでいます。

熱処理によって木材内部の水分と養分が安定し、腐朽や反りを防ぎながらもヒノキ特有の香りを残しています。
高温多湿の環境でも安定した寸法を保ち、自然素材ならではのやわらかな肌触りが心身を癒やします。
外気浴との相性も良く、長く快適に使えるサステナブルなサウナ空間です。
今後は、天然木の新しい活用法として「サーモ×デザイン」の発展が期待されます。
よくある質問|サーモ加工とは
- Qサーモ加工とはどんな処理ですか?
- A
サーモ加工とは、木材を180〜220℃の高温で酸素を遮断した状態で加熱し、細胞構造を安定化させる技術です。薬剤を一切使用せず、木の中のヘミセルロースを分解することで吸湿・膨張を抑え、反りや割れを防ぎます。環境にも人体にもやさしいエコな改質方法です。
- Q通常の杉や桧と比べてどんなメリットがありますか?
- A
サーモ加工を施した杉や桧は、寸法安定性と耐久性が格段に向上します。湿気による膨張や収縮が少なく、腐朽菌やシロアリにも強くなるため、屋外デッキや浴室回りにも安心して使用できます。さらに、熱処理によって生まれる深みのあるブラウンカラーが高級感を演出します。
- Qサーモウッドは屋外でも使えますか?
- A
はい、屋外使用に非常に適しています。ウッドデッキ、外壁、ルーバーなど、雨風にさらされる環境でも変形や腐食が起こりにくく、メンテナンス頻度を抑えられます。無塗装でも約10年以上の耐候性を保ち、経年変化でシルバーグレーに変わる風合いも楽しめます。
- Qサーモ加工された木材の色は変わりますか?
- A
加工直後は赤褐色〜琥珀色ですが、屋外では紫外線の影響で徐々にグレイッシュな色合いへと変化します。これは木が持つ自然な経年美であり、味わいとして楽しむことも可能です。色味を保ちたい場合は、UVカット機能のあるオイル塗装をおすすめします。
- Q無料カットサンプルはどのように申し込めますか?
- A
エコロキア公式サイトより、サーモ杉・サーモ桧の無料カットサンプルをご請求いただけます。ご希望の樹種・サイズをお知らせいただければ、数日以内に発送いたします。実際に触れて質感や色味を確かめてからご検討いただけますので、まずはお気軽にお申し込みください。




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