タブノキ(椨)

タブノキ(椨)の特徴

タブノキ(椨)は、クスノキ科タブノキ属に属する常緑広葉樹で、日本では本州中部以南の沿岸部を中心に自生しています。海に近い地域の社寺林や防風林として見られることが多く、潮風や湿気に強い性質を持っています。

幹は比較的太くなりやすく、広葉樹の中では材が取りやすい部類に入ります。
一方で、ケヤキやナラのような強い意匠性を持つ木ではありません。

材はやや重く、粘りがあり、衝撃を受けても割れにくい性質があります。
そのため、「見せる木」ではなく、使い続けることを前提とした実用材として扱われてきました。
古くから、

  • 船材
  • 臼・杵
  • 彫刻や仏像の芯材
  • 下駄や生活用具

など、粘りと安定性を活かした用途で使われてきました。
タブノキは強度・香り・扱いやすさのバランスで選ばれてきた木です。

タブノキ(椨)の主な性質

タブノキ材は適度な重さと粘りを持ち、刃物の入りはやや重めですが、欠けにくく、衝撃に対して安定しています。
木肌はやや粗めながら、仕上げると落ち着いた表情になります。
色味は淡黄褐色から灰褐色で、経年によりやや濃くなります。

クスノキ科らしくわずかに香り成分を含みますが、クスノキほど強い香気はありません。
この点も、タブノキが中庸とされる理由の一つです。
注意点としては、

  • 硬度は中程度で、耐摩耗性は高くない
  • 重量があり、乾燥管理が必要
  • 意匠性は控えめ

このため、フローリングや意匠家具の主材には向きません。
タブノキは、衝撃と時間を受け止める役割に向いた木です。

よくある質問

Q
タブノキ(椨)は高級木材ですか?
A

一般に高級材として扱われることは少ないですが、雑木として軽視される木でもありません。粘りと安定性を評価され、用途に応じて確実に選ばれてきた実用材です。

Q
クスノキとはどう違いますか?
A

同じクスノキ科ですが、クスノキは香りが強く、防虫性や象徴性が重視されます。一方タブノキは香りが穏やかで、物理的な粘りや扱いやすさが評価されてきました。

Q
フローリングや家具に使えますか?
A

理論上は可能ですが、意匠性や耐摩耗性を考えると床材には不向きです。家具でも、主役材より構造部や芯材向きです。

Q
船材に使われてきた理由は何ですか?
A

潮風や湿気に強く、衝撃に対する粘りがあるためです。完全な耐水材ではありませんが、沿岸地域の実用材として適していました。

Q
似た性質の木材はありますか?
A

シイや一部のカシ類が近い存在です。いずれも派手さはありませんが、耐久性と粘りを評価されてきた常緑広葉樹です。

タブノキ(椨)のコラム

タブノキは評価されるために尖った木ではありません。
強すぎず、香りすぎず、主張しすぎない。

だからこそ、長く使われてきた。
港町の暮らしや、社寺の足元で、黙って役割を果たす。

タブノキ(椨)は「ちょうどよさ」が時間を超えて残ることを教えてくれる木です。