ジャストカットという言葉が、軽く使われすぎている
寸法加工と設計思想はまったく別物
ジャストカットという言葉は、本来「正確に納まる加工」を意味します。
しかし実際には、図面通りに寸法を揃えることだけを指して使われることも少なくありません。無垢材においてそれは十分ではありません。
木は湿度と温度で必ず動きます。
動く素材を、動かない前提で切れば、後から必ず歪みが表面化します。正確さとは、ミリ単位の誤差ではなく、時間の経過に耐える設計のことです。そこまで踏み込めているかどうかが、本質的な差になります。
「国産」という言葉だけでは足りない
国産材という言葉は安心感を与えます。
しかし、樹種ごとの性質を理解していなければ、その安心は成立しません。スギとナラでは縮み方も強度も異なります。設置場所によって適材は変わります。言葉のイメージではなく、素材の性格まで踏み込むこと。そこに初めて責任が生まれます。造作材は“国産であること”よりも、“どう扱うか”の方がはるかに重要です。
無垢材を扱うということの重み
木は必ず動くという前提に立つ
無垢材は乾燥しきった工業製品ではありません。

断面形状や見付寸法は、壁との取り合いと長期安定を前提に設計しています。
空間の湿度に呼応し、わずかに膨張し、収縮します。この動きを許容しない設計は、時間とともに隙間や段差を生みます。重要なのは、動かないように押さえつけることではなく、動いても破綻しない構造をつくることです。エコロキアでは、逃げを設け、応力が一点に集中しない寸法設計を行います。それが長期安定につながります。
仕上がりを想像できるかどうか
加工前に、施工後の姿が見えているかどうか。建具が入ったときのライン、床との取り合い、光が当たったときの影の出方。そこまで想像できるかどうかが、造作材の質を決めます。単なる加工ではなく、空間の完成形を見据えた工程設計。経験がなければ、この視点は持てません。
本物のジャストカットを成立させる5つの思想

丸みの精度と木目の流れを両立させることで、意匠性と耐久性を兼ね備えた仕上がりになります。
- 基準を決める
加工前に最も重要なのは「どの寸法を正とするか」を決めることです。
開口寸法を基準にするのか、仕上がり寸法を基準にするのか、それとも下地寸法を基準にするのか。この判断を曖昧にしたまま加工に進むと、現場で必ず調整が発生します。特に壁厚や床仕上げ厚が絡む造作材では、基準のズレが累積誤差を生みます。ミリ単位の差でも、複数箇所に影響が広がることは珍しくありません。基準寸法の共有とは、単なる確認作業ではなく、後工程の責任範囲を明確にする行為です。ここが曖昧なジャストカットは、精度が高くても成功とは言えません。 - 樹種を理解する
樹種は色味や木目の印象だけで選ぶものではありません。
窓枠、ドア枠、巾木、見切縁、框など、それぞれの部位には異なる負荷と環境条件があります。日射が当たる窓周り、水気が多い場所、人が頻繁に触れる箇所。スギ、ヒノキ、ナラ、クリなど、樹種ごとに縮み方や硬さ、粘りは大きく異なります。用途を無視して選定すると、後から動きや割れが発生します。ジャストカットとは、単に切ることではなく、「その場所で安定する素材を選ぶこと」から始まります。樹種理解が伴わなければ、寸法精度は意味を持ちません。 - 逃げを設ける
無垢材をピタピタ寸法で納めることは、一見美しく見えます。しかしそれは短期的な正解に過ぎません。
木は必ず湿度変化に応じて膨張・収縮します。逃げがない設計は、どこかに応力が集中し、割れや浮き、隙間となって現れます。重要なのは、どこにクリアランスを持たせ、どこを固定するかという設計判断です。壁の不陸、床のレベル差、建具との取り合いを前提に、誤差を吸収できる構造をつくること。逃げは妥協ではありません。長期安定のための積極的な設計です。 - 未確定を整理する
図面は完璧に見えても、現場条件は常に変動します。
仕上げ厚の変更、下地の誤差、施工順の違い。これらを確認せずに加工すると、現場での再調整や追加加工が発生します。ジャストカットを成立させるには、「加工前に曖昧さを減らす」ことが必要です。どこまでが確定情報か、どこが想定かを明確にし、条件を整理してから切る。この工程を省くと、精度の高い加工も意味を失います。未確定を潰すことは、加工精度を上げる以上に重要です。 - 納まりをゴールにする
ジャストカットの目的は、材料を正確に切ることではありません。
現場で迷わず納められる状態をつくることです。加工精度が高くても、納まりが複雑で施工者が判断に迷えば意味がありません。建具が入ったときの見え方、床とのライン、光の当たり方まで想像し、施工工程を逆算して加工します。「切る」ことをゴールにすると失敗します。「納まる」ことをゴールにすると設計が変わります。ここが、単なる加工との決定的な違いです。
なぜエコロキアは深く考えるのか
直してきた経験があるから
無垢フローリングの再生や補修を重ねてきた中で、失敗した納まりも数多く見てきました。割れ、反り、浮き。その原因は、素材ではなく設計不足にあることがほとんどです。だからこそ、加工前に時間をかけます。
「作り直さない」ことを前提にしているから
本当に持続可能なのは、交換しなくていい選択です。造作材も同じです。長く使える設計を最初から行うこと。それが結果的に最も合理的で、最も誠実な方法だと考えています。
無垢でない選択も、正直に提案する
無垢が最適とは限らない場面がある
無垢材は魅力的な素材です。しかし、すべての場面において最適解とは限りません。長尺の部材で反りを極力抑えたい場合、湿度変動が極端な環境、寸法安定性が最優先される建具周りなどでは、芯材にMDFや合板を用い、表面に突板や無垢材を組み合わせた構造の方が合理的な場合があります。無垢は動きます。その動きを理解した上で、「動かさない構造を選ぶ」という判断もまた、素材を知っているからこそできる提案です。
無垢を知っているからこそ、構造材を使い分ける
無垢材の長所は、質感・経年変化・補修可能性です。一方で、寸法安定性や構造的な強度の均一性という点では、工業的に安定した材料に分があります。エコロキアでは、「無垢だから良い」「合板だから悪い」と単純化しません。用途・荷重・設置環境・長期メンテナンス性を総合的に判断し、最も合理的な構造を選びます。無垢を深く扱ってきたからこそ、その限界も理解しています。
素材ではなく、結果で判断する
本当に大切なのは、素材の種類ではありません。長く安定して使えるかどうかです。無垢に固執して割れや反りが出るよりも、適切な芯材構造で安定させる方が、結果として持続可能です。エコロキアは、素材のイメージではなく、施工後の状態を基準に提案します。無垢の魅力を知っているからこそ、必要な場面では構造材も選択肢に入れます。
よくある質問
- Qジャストカットはどこに依頼しても同じですか?
- A
いいえ、設計思想によって結果は大きく変わります。寸法加工だけでなく、樹種特性と逃げ設計まで含めて考えているかどうかが重要です。
- Q無垢材はトラブルが多いのでは?
- A
適切な設計を行えば問題は起きにくくなります。多くのトラブルは材料ではなく、前提条件の不足から生まれます。
- Q図面が未完成でも相談できますか?
- A
可能です。むしろ早い段階で共有いただくことで、加工前にリスクを整理できます。


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