コラムフローリング・床材

スプーンカット・なぐり(名栗)とは?無垢フローリングの表情を決める表面加工の本質

アッシュ(タモ)無垢フローリングのスプーンカット加工。シャープな木目と細かな彫り跡がリズムを生む床面 コラム
直線的な木目を持つアッシュにスプーンカットを施すことで、 表情は立体的でも、空間全体は軽やかにまとまります。

無垢フローリングにおけるスプーンカット・名栗加工とは何か

フローリングを「平らにしない」という発想

スプーンカットやなぐり(名栗)加工とは、無垢フローリングの表面をあえて完全なフラットに仕上げず、意図的に凹凸を残す表面特殊加工のことを指します。多くのフローリングでは、施工性や掃除のしやすさを優先し、表面は均一で平滑に整えられます。しかしスプーンカットや名栗加工では、その均一性をあえて崩します。

バーチ無垢フローリングのスプーンカット加工。柔らかな色合いの中に穏やかな起伏が広がる床面
バーチ特有の淡い色調に、控えめな彫りの陰影。
触感と視覚の両方で、やさしさを感じられる仕上がりです。

これは単なる装飾ではありません。木材は本来、成長過程によって密度や繊維の向きが異なる不均一な素材です。スプーンカットや名栗加工は、その不均一さを欠点として消すのではなく、床の表情として設計に取り込むための加工です。その結果、見た目だけでなく、触感や光の反射、経年変化の現れ方まで大きく変わります。

名栗加工は日本の建築文化から生まれた

名栗加工は、日本の伝統建築において古くから使われてきた技法です。もともとは丸太の表皮を落とす実用的な加工でしたが、次第にその凹凸が生み出す陰影や滑りにくさが評価され、数寄屋建築や茶室などにも用いられるようになりました。

現代で使われるスプーンカットは、この名栗加工の思想を受け継ぎつつ、住宅用途に適した形へと再解釈されたものと捉えると理解しやすいでしょう。伝統技法をそのまま再現するのではなく、現代の住環境に合わせて再設計された名栗表現が、スプーンカットなのです。

現代のスプーンカットはNCルーターによって設計される

手仕事の風合いと再現性を両立する加工方法

現在のスプーンカットや名栗調加工は、NCルーターを用いてプログラムされたデザインを彫る方法が主流です。彫りの深さ、ピッチ、リズムを数値で管理できるため、仕上がりの再現性が高く、施工後の不陸や極端なばらつきを抑えることができます。

これは「機械だから均一になる」という話ではありません。むしろ、素材の個体差を前提にしたうえで、意図した不均一さを安定して再現するための技術です。住宅や店舗といった長期間使用される空間では、この再現性が非常に重要になります。

NC加工だからこそ素材選びが重要になる

一方で、NCルーターは万能ではありません。プログラム通りに削るため、節や補修の多い材を使うと、想定外の欠けや破損が起こるリスクが高まります。特に表面を深く削るスプーンカットでは、その影響が顕著です。

オーク無垢フローリングのスプーンカット加工。彫りの陰影が連続し、床面に立体的な表情が生まれている
彫りの深さが均一に連なるスプーンカット。
オークの安定した木質だからこそ、陰影が強調されても重くなりすぎません。

つまり現代の加工方法では、「加工できるかどうか」よりも、「その材にやるべきかどうか」という判断の重要性が増しています。ここを見誤ると、施工後に修復が難しいトラブルにつながります。

スプーンカットが向いている無垢フローリングの条件

樹種よりも重視すべきはグレード

スプーンカットは、オークやアッシュ、パイン、スギなど、多くの無垢フローリングに理論上は加工可能です。しかし実務上、最も重要なのは樹種ではなくグレードです。

特にラスティックグレードのように、節や割れをパテで補修している材では、表面を削る工程でパテ部分が欠けたり剥がれたりする可能性があります。これはデザインとしての「ラフさ」とは別次元の問題で、仕上がりの安定性を大きく損ないます。

ラスティックグレードをおすすめしにくい理由

ラスティックグレードは、無垢材らしい表情を楽しめる一方で、補修跡を前提とした材でもあります。スプーンカットや名栗加工では、その補修部分が露出しやすく、施工後のトラブルにつながりやすいため、エコロキアでは基本的におすすめしていません。

これはデザインの好みの問題ではなく、施工後の責任を持てるかどうかという判断です。無垢フローリングは失敗が許されない素材だからこそ、条件に合わない加工は避ける必要があります。

スプーンカットがもたらす実用的なメリット

傷や経年変化が目立ちにくい

スプーンカットの凹凸は、細かな傷を光の反射で分散させる効果があります。そのため、フラットな床と比べて使用感が目立ちにくく、経年変化を自然に受け入れやすい床になります。

これは「傷がつかない」という意味ではありません。むしろ、傷がつくことを前提に、それを違和感なく馴染ませる設計と言えます。長く使うほど味わいが増す床を求める人に向いた加工です。

足触りと安全性のバランス

凹凸のある床は、素足で歩いたときに接地面が分散され、冷たさや硬さを感じにくくなります。また、わずかな凹凸が踏ん張りを助けるため、滑りにくさにも寄与します。

意匠性と機能性を同時に成立させられる点が、スプーンカットが評価されている理由のひとつです。

スプーンカット以外の表面特殊加工について

他のデザインも設計上は可能

スプーンカット以外にも、ウェーブやスピンドル、ヘキサゴンなどの表面デザインは設計可能です。ただし、これらはあくまでスプーンカットや名栗加工の考え方を応用したバリエーションであり、基本となる判断軸は共通しています。

ブラックウォルナット無垢フローリングのアローカット加工。矢羽根状の彫りが光を受けて際立つ床面
矢羽根状の彫りが、濃色のウォルナットに明確なリズムを与えます。
光の入り方で表情が変わる、視線を引き寄せる床です。

重要なのは「デザイン名」ではない

表面特殊加工で重要なのは、名称や見た目の派手さではなく、空間の用途や将来のメンテナンスまで含めた適合性です。ここを整理せずに選ぶと、後悔につながりやすくなります。

メルバウ無垢フローリングのヘキサゴンカット加工。六角形の彫り模様が連続する個性的な床面
高密度なメルバウに幾何学的なカットを施したヘキサゴン加工。
素材の強さとデザイン性を両立した、主役になる床です。

エコロキアの立ち位置|なぜ詳しく語れるのか

加工後まで見据えた判断ができる

エコロキアでは、無垢フローリングの販売だけでなく、施工・研磨・再生まで一貫して扱っています。そのため、加工した後にどうなるか、やり直しが可能かといった点まで含めた判断が可能です。

無理な加工はすすめない

条件が合わない場合、スプーンカットや名栗加工を無理にすすめることはありません。これはデザインの否定ではなく、責任範囲を曖昧にしないための判断です。

スプーンカットは「雰囲気」ではなく「判断」

スプーンカットや名栗加工は、無垢フローリングを特別なものにする強い力を持っています。その一方で、条件を選ぶ加工でもあります。「できるか」ではなく「やるべきか」。この整理こそが、後悔しない床づくりの出発点です。

スプーンカットや名栗加工が「向いているか」を整理する相談

スプーンカットや名栗加工は、無垢フローリングの表情を大きく変える一方で、素材のグレードや使い方を選ぶ加工でもあります。
「できるかどうか」ではなく、「やるべきかどうか」を整理せずに進めると、施工後に違和感や後悔が残るケースも少なくありません。
エコロキアでは、樹種やデザインの話だけでなく、用途・掃除方法・将来の再研磨まで含めて、採用の是非を一緒に整理します。
加工を前提にした相談でも、迷っている段階での相談でも構いません。判断材料を揃えるところからお手伝いします。

よくある質問

Q
スプーンカットは毎日の掃除が大変になりますか?
A

フラット床より手間は増えますが、日常清掃で破綻するほどではありません。
凹凸に埃が溜まりやすいのは事実なので、基本は掃除機+柔らかいブラシノズルで「溝をなでる」イメージが向きます。注意点は、水拭きを頻繁にしすぎないことと、濡れ雑巾でこすり続けないこと。凹部に水分が残る環境では汚れが固定化しやすいので、生活スタイル(掃除頻度・土足・ペット)に合わせて採用判断をすると失敗しにくいです。

Q
スプーンカットは足が痛くなったり、歩きにくくなったりしませんか?
A

加工の深さ次第で体感が変わるため、「深さ設計」が重要です。
適切な凹凸なら、接地が分散されてむしろ心地よいと感じる人も多い一方、深すぎると足裏への刺激が強くなります。注意点は「サンプルは小さく、実際の体感は広い面で変わる」こと。裸足中心かスリッパ中心か、家族の年齢、滞在時間の長い部屋かどうかを基準に、深さ・ピッチを調整できる前提で検討するのが安全です。

Q
名栗加工とスプーンカットは何が違うのですか?
A

違いは“見た目の名称”より「凹凸の性格(ライン・深さ・リズム)」です。
名栗は伝統的に刃物跡を活かした表情で、やや荒さや方向性が出やすい傾向があります。スプーンカットは丸みのある彫りで、柔らかな陰影と触感になりやすいのが特徴です。注意点は、同じ呼び名でも工場・設計次第で仕上がりが変わること。選ぶときは名称ではなく、実物の凹凸・深さ・触感で判断するのが確実です。

Q
ラスティックグレードでもスプーンカットはできますか?
A

加工自体は可能でも、仕上がりの安定性を理由におすすめしにくい場合があります。
ラスティック材は節や割れをパテで補修していることが多く、表面を彫る加工ではパテ部分が欠けたり剥がれたりするリスクが上がります。注意点は、施工直後は良く見えても、季節の伸縮や踏圧で欠けが顕在化する可能性があること。判断基準は「補修の量」「節の状態」「彫りの深さ」。長期品質を優先するなら補修の少ないグレードが無難です。

Q
スプーンカットに向く樹種・向かない樹種はありますか?
A

樹種の相性はありますが、最重要は樹種より“グレードと用途”です。
一般に硬い樹種はシャープな彫りが出やすく、柔らかい樹種は丸みが出て穏やかな触感になりやすい傾向があります。ただし、同じ樹種でも節・補修の多さで結果が変わります。注意点は「柔らかい樹種=傷に弱い」面があること。用途(子ども部屋・土足店舗・寝室など)と仕上げ塗装を含めて総合判断するのが失敗しにくいです。

Q
塗装はオイルとウレタン、どちらが合いますか?
A

どちらも選べますが、“凹凸がある前提”で塗装設計が必要です。
オイルは質感が出やすい一方、汚れの入り方・メンテ頻度が生活に直結します。ウレタンは保護性能を取りやすい反面、凹凸の谷に塗膜が溜まりすぎると表情が鈍く見える場合があります。注意点は「オイル一択」「ウレタン=テカテカ」という先入観で決めないこと。求める触感、掃除の仕方、将来の再塗装方針を基準に選ぶと合理的です。

Q
土足の店舗やカフェでもスプーンカットは使えますか?
A

可能ですが、条件整理が必須です。
土足では砂や小石が研磨材のように作用し、凹凸の山部分が早く摩耗することがあります。一方で凹凸により傷が目立ちにくいという利点もあります。注意点は「入口の砂対策(マット・動線)」と「仕上げ塗装の耐摩耗性」。判断基準は来客数、雨天時の泥、水拭き頻度。住宅向けと同じ発想で採用するとズレるので、運用込みで設計するのが前提です。

Q
将来、再研磨や張り替えはしやすいですか?
A

フラット床より制約が出やすく、最初の板厚設計が重要です。
凹凸を削ってフラットに近づけるには、当然その分の研磨代が必要になります。無垢材でも板厚や構造によって研磨可能回数には限界があります。注意点は「今の好み」だけで深い彫りを選び、将来の再研磨を想定しないこと。判断基準は板厚・施工方法・将来の改装計画。再生まで見据えるなら、深さを抑えた設計が現実的です。

Q
相談するときに、何を伝えれば判断が早くなりますか?
A

用途と運用条件が分かると、加工の可否と設計が一気に精度上がります。
具体的には、

  • 住宅か店舗か
  • 土足か素足か
  • 掃除頻度と方法
  • ペット有無
  • 希望する塗装(未定でも可)
  • 希望する凹凸感(強め/控えめ)
  • 採用予定のグレード(ラスティックかどうか)

を共有すると判断が速いです。注意点は「デザイン名だけで相談しない」こと。条件が揃うほど、やるべきか/やらないべきかを責任ある形で整理できます。

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