エコロキアとはコラム

なぜ僕は「国産材が良い」とは言わないのか?木の仕事に携わる者が語る本質の話

日本の山間部の土場に整然と積まれた国産杉・ヒノキの丸太と背景の森林風景 エコロキアとは
日本各地の山から搬出された丸太。木は理念ではなく、この一本から始まります。産地よりもまず、年輪と状態を見ます。

木は“国”で選ぶものではない

「国産材だから良い」という言葉の危うさ

木材を扱う仕事を長く続けていると、「国産材だから安心」「日本の木だから安全」という言葉を耳にする機会が増えます。
もちろん、日本の森で育った木には素晴らしい魅力があります。
スギの素直な木理、
各地のヒノキの香り、
国産広葉樹の粘り。
エコロキアはそれらを否定するつもりは一切ありません。実際、日本各地の製材所を巡り、大小さまざまな現場を見てきました。その土地で丁寧に育てられ、誠実に製材された木の美しさは、胸を打つものがあります。

製材所の土場に積まれた大径木の丸太と搬送ライン設備
立派な言葉よりも、まずは原木を見る。乾燥前の状態、割れ、芯の位置。精度はここから決まります。

しかし「国産」という言葉だけが独り歩きし、材質・乾燥・精度・用途との相性といった本質的な説明が省略されてしまう場面を見ると、木が軽く扱われているような違和感を覚えます。木は工業製品ではありません。
一本一本、成長環境も年輪も含水率も違う。だからこそ、選定の理由は“国籍”ではなく“性質”であるべきです。国産材が良いのではなく、適切に選ばれた材が良い。それが現場で木に触れてきた人間の実感です。

森を守るという言葉の重さ

「森を守る」という言葉もまた、簡単に使われがちな表現です。
ですが、森を守るとは単に国産材を使うことではありません。歩留まりの低い加工をすれば資源は無駄になりますし、乾燥が甘ければ施工後に反りや割れが起こり、張り替えが必要になります。それは本当に環境負荷が低いと言えるのでしょうか。

木を長く使える状態に仕上げること。含水率を管理し、加工精度を高め、施工後の動きを見越した提案をすること。
それが結果的に森を守ることにつながります。僕は全国規模とは言いませんが、日本各地の製材所を見てきました。最新設備を備えた工場もあれば、昔ながらの機械で丁寧に削る小規模な工場もあります。大切なのは規模でも派手さでもなく、木に向き合う姿勢です。

森を語るなら、木の動きを語らなければならない。それを語らずに大きな理想だけを掲げることに、僕は距離を感じます。

ホームページの立派さと精度は比例しない

フォロワー数と加工精度は別問題

現代は情報発信の時代です。
立派なホームページ、洗練された写真、数万人のフォロワー。
そうした外側の印象が、品質の証明のように見えることがあります。しかし、実際に現場を訪れると、必ずしもそれが製品精度に直結しているわけではありません。

僕は日本各地の製材所を巡ってきました。
SNSで多くの支持を集めている工場も見ましたし、ほとんど情報発信をしていない工場も訪れました。

その中で感じたのは、派手さと精度は必ずしも一致しないという事実です。見た目は華やかでも、乾燥管理が甘い現場もある。一方で、装飾的な要素は一切なくても、含水率を徹底管理し、刃物の状態を常に整え、寸法精度を守り続けている工場もある。

大径木から製材された国産広葉樹の大断面角材と工場内部
大径木を正確に挽き出す技術。寸法精度と含水管理が、完成後の安定性を左右します。

木は嘘をつきません。加工精度は、施工後の反りや隙間となって現れます。時間が経てば必ず結果が出ます。だからこそエコロキアは、見た目よりも数値と仕上がりを見ます。それが木材に携わる者としての最低限の姿勢だと思っています。

実直な現場の静かな強さ

小規模な製材所の中には、豪華な設備や広報活動はなくとも、驚くほど丁寧な仕事を続けている場所があります。刃物を研ぐ音、含水率計の数値を真剣に見る目、一本一本の木目を確かめながら流す工程。その積み重ねが製品の安定性を生みます。

そうした現場は声高に語りません。
「日本の森林を守る」という大きな表現も使いません。ただ黙々と、精度を守り続ける。その姿を見たとき、私は言葉よりも重いものを感じます。木は、派手な言葉よりも静かな技術に反応します。

エコロキアが目指すのは、その静かな精度に敬意を払う姿勢です。地域や物語を否定するのではなく、実際の加工力と仕上がりで評価する。そこに深みが生まれます。

エコロキアが大きな言葉を使わない理由

木は思想で動かない

木は感情で動きません。湿度で動きます。温度で動きます。乾燥で割れます。収縮で隙間が生まれます。そこを理解せずに理念だけを語っても、現場では通用しません。

国産無垢フローリングを加工する製材工場のプレーナー・モルダー設備
ホームページでは見えない部分。刃物の状態、含水率管理、機械の調整。静かな現場こそが品質をつくります。

エコロキアは「国産だから良い」とは言いません。
言えないのです。
なぜなら、用途によっては海外材の方が適していることもあるからです。耐久性、硬さ、油分、寸法安定性。条件を整理すれば、答えは変わります。

だからこそエコロキアは、産地ではなく性質で選びます。それが誠実だからです。誰かを否定するためではなく、木を裏切らないために。

信頼は“偏らないこと”から生まれる

ひとつつの価値観に寄りかかれば、発信は簡単になります。ですが、それは木の多様性を狭めることにもつながります。エコロキアはスギも扱いますし、ヒノキも扱います。広葉樹も、海外材も、必要であれば提案します。重要なのは適材適所です。

偏らないこと。それは中途半端ではありません。むしろ、すべてを見た上で選ぶということです。日本各地の製材所を見てきた経験、加工精度の差を目の当たりにしてきた経験。それらがあるからこそ、エコロキアは簡単な言葉を選びません。

信頼とは、複雑さを引き受けることだと思っています。

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