リンギ跡(桟跡)の基礎知識と発生メカニズム
リンギ跡とはどのような現象なのか
リンギ跡(桟跡)とは、木材乾燥の工程で板材を桟積みする際、桟木と接触していた部分だけが黒ずんだり、凹んだり、色ムラとして残ってしまう現象のことを指します。
製材所や乾燥工場では非常に一般的に見られる現象で、特にアカシア、パイン、スギ、広葉樹全般など、乾燥の難しい樹種で目立ちやすくなります。木材は乾燥過程で内部の水分が移動し、その速度や方向が均一でないと表面にムラが生じやすいため、桟木との接地部分だけ乾燥条件が変わってしまうことが原因です。

比重が高く乾燥が難しい広葉樹は、特に桟木の配置と乾燥条件が品質に直結します。
無垢フローリングのような“見える商品”の場合、この跡が大きな品質問題に繋がるため、製材所としては必ず理解しておくべき現象です。
乾燥条件の違いが跡として残る理由
木材の乾燥は、外側から水分が飛び、中の水分が外に移動していく過程です。
このとき、桟木と接している部分は通気が制限され、周囲より乾燥が遅れる傾向があります。一方、露出面は風や熱が当たりやすいため早く乾燥します。この差が大きければ大きいほど、乾き具合の違いが色ムラや黒ずみとして表面に現れてしまいます。また、桟木の含水率が高いままだと接地面に湿気が溜まり、シミのような跡が強く残る場合があります。このように、乾燥条件のわずかな差が大きな跡として現れるため、工程管理が非常に重要となります。
リンギ跡が起きやすい原因とその背景
桟木の含水率が高い場合に発生しやすい理由
最も一般的な原因が、桟木そのものの含水率が高い状態で使用されているケースです。表面は乾燥しているように見えても、内部が乾き切っていない桟木を使うと、接触面の湿度だけが高い状態が続き、乾燥速度に差が出るためムラが生じます。

屋根付きのスペースで風を通しながらゆっくりと水分を抜き、材の内部応力を落ち着かせる重要な工程です。
また、湿った桟木にはカビや汚れが付着しやすく、これが板材側に転写されて黒ずみの原因になることもあります。特に製材所では桟木を繰り返し使うため、使い回しの桟木ほど含水率のバラつきが大きく、品質に影響しやすい傾向があります。そのため、桟木の管理は乾燥工程において最重要ポイントと言えます。
樹種と桟木の相性が悪いことで起きる問題
樹種によって比重や硬さが大きく異なるため、桟木と乾燥する木材の相性が悪い場合、跡が深く残りやすくなります。
例えば、柔らかいスギ材を乾燥させる際に、重く硬い広葉樹の桟木を使用すると、接地面に圧がかかって凹み跡が残る原因になります。逆に重いアカシアや広葉樹材の乾燥に柔らかい針葉樹の桟木を使うと、桟木側が潰れて汚れが出たり、変形した桟木が木材に跡を付けたりする場合があります。このように、“どの桟木を使うか”という選択は、乾燥品質を大きく左右する重要な要素です。
リンギ跡を防ぐための具体的な製材所向け対策
桟木の含水率管理とローテーションの徹底
リンギ跡対策の中で最も効果的なのが、桟木の含水率管理を徹底することです。桟木は板材より後回しにされがちですが、実際には乾燥品質を左右する“隠れた要”と言える存在です。桟木の含水率を10〜12%程度まで落としてから使用すると、乾燥ムラが大幅に減少します。
また、桟木は使い回すほど内部に湿気を溜めやすくなるため、乾燥用桟木をローテーションし、使用後は必ず乾燥させる仕組みを作ることが重要です。こうした管理を徹底することで、桟跡の発生率は目に見えて下がります。
樹種ごとに桟木を使い分ける仕組みづくり
樹種の違いによる比重差は乾燥の仕上がりに大きく影響するため、桟木も用途に合わせて使い分ける必要があります。具体的には、軽くて柔らかい針葉樹材の乾燥には針葉樹の桟木を、広葉樹材には硬く比重の高い桟木を使用する組み合わせが最適です。
また、オークやアカシアなど乾燥が難しい材の場合は、耐久性があり変形しにくい材の桟木を選ぶことで跡の発生を予防できます。こうした“桟木の最適化”はコストが大きくかかる対策ではありませんが、品質安定には非常に大きな効果を発揮します。
乾燥方式・桟積み方法の工夫による品質向上
桟木の位置・本数を揃えて荷重分散を確保する
桟木の位置が揃っていない場合、木材にかかる荷重が不均一になり、その部分だけが強く押されて跡が深く残る原因になります。

木口の表情や桟木の厚み、積層の整い方がよく分かり、乾燥工程の丁寧さを感じられる写真です。
そのため、桟積みを行う際には、上下の桟木の位置を正確に揃えることが重要で、レーザー墨出しや下げ振りを利用して位置を確認することが推奨されます。また、厚みのある材や重い広葉樹材の場合は、桟木の本数を増やすことで荷重が分散され、跡の発生を抑えることができます。桟木の配置は乾燥の見た目以上に大きく影響しますので、作業者全体で統一したルールを設けることが理想的です。
急速乾燥を避け、段階的な乾燥工程を導入する
急激な乾燥は木材内部の応力が大きくなり、桟木と接している部分だけ乾燥が遅れるため、跡が濃く残る傾向があります。特に広葉樹やアカシアなどは、初期段階で温度を上げすぎると跡が出やすくなるため、初期は低温でじっくり水分を抜き、中期で湿度を調整し、最後に短時間だけ高温にする段階的な乾燥が推奨されます。
これは乾燥に少し時間がかかる方法ではありますが、木材の品質を高め、桟跡の発生率を大幅に減らす効果があります。
桟跡が出てしまった場合の対応方法と判断基準
軽度・中度のリンギ跡の補修方法
軽度のリンギ跡であれば、表面の薄い研磨によってほとんど目立たなくすることができます。
また、針葉樹の場合はスチームを当てることで繊維が膨らみ、凹みがある程度改善されるケースもあります。黒ずみが軽度であれば、酸素系漂白剤(オキシドール)によって色ムラが薄くなることもあります。これらの補修方法は、無垢フローリングとして加工する際に最終仕上げで解消される場合も多く、跡の深さや材質に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。
重度の跡は短尺材や構造材への振り分けを検討する
深い圧痕や強い黒ずみが残ってしまっている場合は、研磨やスチーム処理では改善が難しく、外観に影響することがほとんどです。このような場合は、無理に見える部材として使用せず、短尺材や構造材として振り分ける判断が必要です。無垢フローリングや家具材として出荷する場合、わずかな跡でもクレームにつながる可能性があるため、製材所で品質基準を統一し、明確なランク分けを行うことが製品価値を守るうえで重要です。
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