無垢フローリングに“木工用ボンド”がNGな本当の理由
木が「動く」ことを前提にしない接着剤だから
無垢フローリングの施工では、「木が呼吸する」という自然素材特有の動きに対応できることが大前提です。木工用ボンド(酢酸ビニル樹脂系)は水性のため、施工直後に木材へ水分を与え、膨張・反り・突き上げを引き起こします。乾燥後には逆に収縮して隙間が生じ、床鳴りの原因にもなります。さらに耐熱性や耐水性が低く、床暖房や湿度の高い場所では接着力が低下。つまり、木工用ボンドは「動かない木材」向けの接着剤であり、呼吸する無垢材とは相性が悪いのです。
また、白化(接着剤が白く残る)や硬化後の脆さも問題。見た目の美しさや経年の安定性を考えると、無垢フローリングでは木工用ボンドは絶対に避けるべきです。
接着剤の種類と特徴を徹底比較
ウレタン系:最も汎用的で信頼性が高い
ウレタン系接着剤は、無垢フローリング施工で最も多く使用されているタイプです。特徴は高い弾性と耐久性。木の膨張収縮に追従できるため、床鳴りや反りを防ぎます。また耐熱性・耐水性に優れ、床暖房にも対応。溶剤臭の少ない低VOCタイプもあり、住宅・店舗いずれにも適しています。

弾性を保持し、床鳴りや剥がれを防ぐために欠かせない接着剤です。
施工時は「くし目ヘラ」で均一に塗布することが基本。硬化後も弾性を維持するため、木の動きに柔軟に対応できます。無垢材の特性を理解している職人の間では“標準装備”とも言える接着剤です。
エポキシ系:強度重視の部分施工に適する
エポキシ系接着剤は、二液混合による化学反応で非常に強固に硬化します。下地がコンクリートスラブの場合や階段の踏板、框(かまち)、巾木などの構造的部位で使われることが多く、耐薬品性・耐水性にも優れています。ただし、硬化後に弾性がないため、フローリング全面への使用には不向き。木の動きを吸収できず、クラックの原因になります。

コンクリート下地やヘリンボーン張りなど、強力な接着力が求められる現場で活躍します。
施工に慣れが必要で、混合比率を誤ると硬化不良や強度低下を起こすため、DIYでは扱いにくい接着剤でもあります。
アクリル系:施工性に優れるが弾性は低い
アクリル系接着剤(アクリルエマルジョン系)は、比較的安価で塗布しやすい水性タイプ。速乾性があり、工場製品や複合フローリングでは重宝されますが、無垢材には不向きです。水分を含むため木が膨張しやすく、乾燥すると収縮して目すきが発生します。また、弾性が低く、木の動きに追従できません。
ただし、最近では溶剤系の高弾性アクリル樹脂タイプも登場しており、部分的な補修やカットパーツの固定に使われるケースもあります。無垢材では主力ではないものの、用途を選べば補助的に活躍します。
シラン系:新世代の“万能型”接着剤
シラン変成ポリマー(MSポリマー)系接着剤は、ウレタン系の弾性とエポキシ系の強度を兼ね備えたハイブリッド型接着剤です。化学的には湿気硬化型で、施工時に空気中の水分と反応して硬化します。これにより木の動きに柔軟に追従し、かつ耐熱・耐水性も高いという特長があります。

さらに、溶剤やイソシアネートを含まないため、安全性・低臭性が高く、室内施工にも最適。硬化後の弾性が長期間持続するため、床鳴り抑制にも効果的です。近年の高性能無垢フローリング施工では、ウレタンに代わって主流になりつつある接着剤といえます。
施工環境別・最適な接着剤の選び方
【1】床暖房や高湿度環境ならシラン系または耐熱ウレタン系
床暖房では温度変化に伴い木材が繰り返し膨張・収縮します。そのため、弾性を持つウレタン系か、より高耐熱なシラン変成ポリマー系を選びましょう。これらは熱伝導性にも優れ、床材の動きを吸収して床鳴りを抑えます。
湿気が多い場所やマンションの下階などでは、耐水性が高く、VOCの少ない製品を選ぶことが重要です。エコロキアのように自然素材を扱う現場では、F★★★★認定の環境対応製品が安心です。
【2】根太貼りや部分補修ならウレタン系+ステープル併用
下地が木の根太構造の場合、接着剤だけでは木の動きを抑えきれません。ウレタン系を薄く塗布し、ステープル(釘)で固定する「ハイブリッド施工」が理想です。接着剤が弾性クッションの役割を果たし、釘止めで浮きを防止します。
一方、部分補修では硬化が早く強度の高いエポキシ系が有効。ただし、仕上げ面が見える場所では硬化色が変化することがあるため、注意が必要です。
接着剤の“選定力”が職人の技を決める
無垢フローリングは、接着剤選び一つで寿命が大きく変わります。「水性」か「溶剤系」か、「弾性」か「剛性」かを見極めることが重要です。木工用ボンドは短期的には便利でも、長期的には木の呼吸を妨げる敵。対して、ウレタン系やシラン系は木の特性を理解した「共存型接着剤」といえます。

適切なボンド選びと丁寧な作業が、仕上がりの美しさと耐久性を左右します。
施工現場の環境、床暖房の有無、下地構造などに応じて最適な種類を選ぶことで、無垢フローリングは何十年も美しく生き続けます。木の命を長く活かすためにも、「接着剤選び」は決して妥協してはいけない部分です。
よくある質問と回答
- Q無垢フローリングの施工に木工用ボンド(白ボンド)は使えますか?
- A
使用できません。木工用ボンド(酢酸ビニル樹脂系)は水性のため、施工時に木材へ水分を与えてしまい、膨張・反り・突き上げの原因になります。さらに乾燥時には収縮して隙間が発生することも。無垢フローリングは湿度による伸縮を繰り返すため、弾性のあるウレタン系またはシラン変成ポリマー系接着剤が推奨されます。
- Q床暖房対応の無垢フローリングにはどんな接着剤を使えばいいですか?
- A
床暖房の場合は、耐熱性・弾性・低VOC(低有害揮発成分)を満たす接着剤を選ぶ必要があります。具体的には「ウレタン系(耐熱タイプ)」や「シラン変成ポリマー系(MSポリマー系)」が最適です。代表的な製品ではコニシの「床職人KU928C-X」や、SikaBond、Bona R851などが床暖房対応の実績を持っています。
- Qウレタン系とシラン系の接着剤は何が違うのですか?
- A
どちらも弾性に優れたフローリング用接着剤ですが、主成分と特性が異なります。
- ウレタン系:強力な接着力と高弾性。耐水性・耐熱性に優れ、国内標準的。やや溶剤臭あり。
- シラン系(MSポリマー):溶剤フリーで安全性が高く、低臭・低VOC。ウレタンよりやや柔らかく、環境性能に優れる。
施工環境や下地の種類、求める耐久性に応じて選び分けます。
- Qフローリングを釘やビスで固定する場合でも接着剤は必要ですか?
- A
はい。接着剤と釘(またはステープル)を併用するのが理想的です。釘止めだけでは木の動きにより床鳴りや反りが発生しやすく、接着剤を併用することで下地との密着を高め、長期的な安定性が得られます。特に根太貼り工法の場合は、ウレタン系の薄塗り+釘止めが一般的です。
- Qエポキシ系接着剤は無垢フローリング全体の施工にも使えますか?
- A
条件付きで使用可能です。従来、エポキシ系は「弾性がないため無垢材には不向き」とされてきましたが、下地がコンクリートスラブで直貼り施工の場合や、ヘリンボーン張りなど精密な意匠張りでは、高い初期接着力と硬化後の安定性から選ばれるケースもあります。
特に、無垢材の厚みが薄いタイプ(15mm以下)や、小幅材の寄せ張りパターンでは、木の動きが少ないためエポキシ系の剛性が有効に働きます。ただし、広幅無垢材や湿度変化の大きい環境では、膨張・収縮を吸収できず割れや浮きが生じるリスクもあるため、施工環境を十分に考慮する必要があります。
そのため、全面接着には弾性を持つウレタン系またはシラン変成ポリマー系を基本としつつ、エポキシ系は部分的な補強材や意匠張りの特殊施工に限定して使うのが理想的です。
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