思い入れのある商品はなぜ売れるのか
無垢フローリングやウッドデッキといった天然木の建材を販売していると、つくづく実感することがあります。それは「売り手自身が思い入れを持っている商品は、自然とよく売れる」ということです。
過去の営業経験から感じたこと
随分前、私がまだ不動産賃貸の営業をしていた頃のことです。自分自身が「ここに住みたい」と心から思えるマンションや、家主さんがとても親切でお世話になっている物件を紹介すると、不思議と成約率が高くなりました。
セールストークの内容そのものよりも、そこに込められた“熱”や“本気度”が、お客様に自然と伝わっていたのだと思います。
木材販売における思い入れ
今は無垢フローリングやウッドデッキといった天然木を扱っていますが、この感覚は変わりません。
直接の販売であっても、ネット通販であっても、思い入れのある商品は語る言葉が自然と増え、文章も熱を帯びて長くなります。そして、その熱量はきっとお客様にも伝わり、購入というかたちにつながっていくのです。
アカシアとの出会いと日本市場への導入

私にとってアカシアの無垢フローリングは、まさに思い入れの深い商品のひとつです。
今では日本市場でも広く知られる存在となったアカシアですが、15mm厚のアカシア無垢フローリングが国内に本格的に流通し始めた頃は、まだまだ珍しいものでした。
当時、私は「どの国で、どの工場ならアカシアのフローリングを安定して生産できるのか」を探すために、東南アジアを飛び回っていました。最初に手を差し伸べてくれたのはインドネシアの工場。その後、ベトナムの工場も加わり、少しずつ生産体制が整っていきました。現在では複数の工場がアカシア無垢フローリングを生産するまでに成長していますが、その始まりにはこうした地道な探索と、人と人とのつながりがあったのです。
ヴィンテージ加工の開発秘話
そんなアカシアに新しい価値を加えようと始まったのが「ヴィンテージ加工」の挑戦です。
工場での試行錯誤
インドネシアの工場で、私と現地の工員たちはフローリングに自然なダメージを与えるため、トンカチやスクレイパーを手に取り、板を叩いたり削ったりして試行錯誤を繰り返しました。
しかし、なかなか「これだ!」という表情にはたどり着きません。
社長が見せてくれた一手
そんな時、工場の社長が笑顔でやってきて、手に持っていた丸い鉄の輪っかを材面に押し付けてゴリゴリと引っかきました。するとそこには、まるでノコ目のような美しいダメージが刻まれていたのです。
「これだ!」と一同が声を上げた瞬間でした。
まさに求めていた自然な使い込み感を持つヴィンテージ加工が誕生したのです。

失われた師と懐かしさ
先日、そのインドネシアの工場の社長がお亡くなりになったことをFacebookを通じて知りました。
忘れられない思い出
あの時、社長と一緒に汗をかきながら試行錯誤した時間、工員たちの笑顔、そして鉄の輪っかで生まれた加工の美しさ。どれも鮮明に記憶に残っています。
コロナ禍でなければ、直接インドネシアを訪れて献花をしたい。そんな思いに駆られました。
オイル仕上げと懐古
今、自分の手でアカシアのフローリングにオイルを塗り込む作業をしながら、あの頃を思い出します。
オイル仕上げを施すと絶妙な凹凸感が際立ち、木の表情がぐっと深まります。新品なのにどこか懐かしい風合いをまとい、その質感はまさに社長と共に生み出した財産なのです。
売り手の想いが商品に宿る瞬間
私はこのアカシアのヴィンテージ加工無垢フローリングに特別な想いを込めています。
なぜなら、この商品は単なる建材ではなく、現地工場の人々と共に汗を流し、アイデアを重ねて生まれた「物語を持つ商品」だからです。
売り手の熱量が伝わる
商品に込めた想いは、必ずお客様に伝わります。私はこのフローリングを紹介するとき、自然と話すことが多くなり、文章も長くなります。それは決して営業トークではなく、本心から「良い」と思っているからです。
物語を共有する価値
商品を売るとは単に「物を渡すこと」ではなく、その背景や物語を伝えることだと信じています。アカシアのヴィンテージ加工には、現地の工場での出来事や社長との思い出が宿っており、それこそが大きな価値なのです。
これからのアカシアの未来
アカシアはこれからも私にとって特別な存在であり続けるでしょう。
ヴィンテージ加工という新しい挑戦は、その魅力をさらに引き出し、住まいを豊かにする可能性を秘めています。
これからも一枚一枚の板と真剣に向き合い、その魅力をお客様に届け続けたいと思っています。

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