奈良県産・吉野ヒノキの無節、しかも無塗装。
それでも写真のように面が“しっとり光る”のは、偶然ではありません。ヒノキという樹種の性質だけでなく、
- 製材の思想
- 乾燥
- 仕上げ加工
- 保管と扱い
- 現場での環境条件
までが噛み合ったとき、無塗装でも艶は立ち上がります。
無塗装で艶が出るメカニズム
光沢は「塗膜の艶」ではなく「面の艶」
無塗装の光沢は、塗料の反射ではなく“木の表面そのもの”が整ったときに出ます。
木の表面には目に見えない凹凸があり、凹凸が大きいほど光は散乱して白っぽく見えます。逆に、刃物で切削された面や、適切な番手で均された面は凹凸が小さく、光が一定方向に反射しやすくなり、艶として知覚されます。
つまり「無塗装なのに光っている」は、木が良いというだけでなく“面の精度が高い”サインです。ここで重要なのは、艶が強い=必ずしも滑りやすい、危ない、という短絡ではなく、表面の均質性と繊維の寝かせ方に由来する艶だという理解です。

塗膜の艶ではなく、加工精度によって生まれる本物の光沢です。
吉野ヒノキが「艶を育てやすい」材である理由
吉野材は一般に年輪幅が整い、目が細かい傾向が語られますが、艶に関係するのは“繊維の素直さ”と“導管構造の差”です。
ヒノキは環孔材のように大きな導管が並ぶ材ではなく、表面に大穴が目立ちにくい。そのため、同じ加工をしても表面の乱れが出にくく、面が締まり、反射が揃いやすい。さらに無節材は節周りの繊維の乱れが少ないため、光沢が途切れにくいのも大きいポイントです。
加えてヒノキは樹脂分を含み、乾燥・加工の条件が良いと“繊維が寝る”方向にまとまりやすい。結果として、塗装で艶を作るのではなく、素材と加工で艶が立つ。
ここを理解すると、無塗装の艶を「当たり外れ」ではなく「条件の積み重ね」として再現・選別できるようになります。
艶を決めるのは「乾燥」と「含水率」の安定
含水率が不安定だと、面が荒れて艶が消える
無塗装の艶は、表面の微細な整いが命です。
しかし木が動けば、その整いは簡単に崩れます。含水率が高いまま加工すると、後から収縮して目地が出たり、繊維が起きてザラつきが出たりしやすい。逆に乾燥しすぎや急激な乾燥でも、細かな“毛羽立ち”や微細割れが出て、反射が乱れます。
つまり艶は「磨けば戻る」というより、乾燥の履歴が悪いと“戻しにくい”性質を持ちます。無塗装で艶が出ている材は、乾燥の工程が丁寧で、保管中の湿度変動も比較的少なかった可能性が高い。現場で艶を維持したいなら、施工前後の環境(特に冬場の過乾燥、夏場の多湿)を読み、急変させないことが最優先になります。
無塗装の「良い艶」は、乾燥の良さの証拠にもなる
無塗装なのに面が均一に光る場合、乾燥のムラが少なく、材内応力が比較的落ち着いているケースが多いです。もちろん艶だけで全てを断定はできませんが、艶が“線”で揃って出ている、板ごとの表情が極端に違わない、触ったときのザラつきが少ない――このあたりは乾燥品質や加工品質と相関しやすいポイントです。

吉野ヒノキ無節材ならではの上品な艶感です。
逆に、部分的に白っぽく曇る、ところどころ毛羽立つ、触ると粉っぽい、板によって色艶差が極端、という場合は、乾燥や加工条件が揺れている可能性があります。購入検討の段階なら、サンプルを“日当たりのある場所/ない場所”で見比べ、触感と反射の揃い方を確認すると判断しやすい。無塗装は誤魔化しが効かない分、品質が見える。艶はその“見える指標”のひとつです。
仕上げ加工で艶は作れる:プレーナーとサンディングの話
「刃物で切った面」は、サンディングとは別の艶が出る
写真のような艶でよくあるのが、仕上げの切削面がきれいなケースです。超仕上げカンナや良いプレーナーで出した面は、繊維がスパッと切れて寝やすく、光が揃って返ります。
一方、粗いペーパーで削って終わると、繊維がちぎれたり起きたりして散乱が増え、白っぽくなりがちです。無塗装で艶を狙うなら「削って平ら」だけでは足りず、「繊維を潰さず、整えて寝かせる」が要点になります。
ここは現場での再現が難しいところで、DIYで紙やすりを当てただけでは同じ艶になりません。もし現場で補修や部分研磨をするなら、番手の進め方だけでなく、最終工程での繊維の寝かせ方(圧・方向・道具)まで管理しないと、補修箇所だけ艶が飛ぶ、あるいは逆にテカりすぎて目立つ、が起こります。
無塗装で“上品に光らせる”番手と手順の考え方
無塗装の艶は、番手を上げれば必ず良くなるわけではありません。細かくしすぎると、材によっては表面が“磨かれすぎ”てムラが出たり、汚れが乗りやすく感じたりすることもあります。

狙いは「触って気持ちいい」艶で、鏡面ではない。基本は、粗目で平滑を作り、段階的に傷を消し、最終で繊維を整える。さらに重要なのが、必ず木目方向を意識すること。横切り傷が残ると、反射が乱れて曇りに見えます。
DIYでできる範囲は、軽い毛羽取りや、傷の“馴染ませ”まで。全面を同じ艶に揃える、既存の艶にピタッと合わせる、は難易度が上がります。境界線として「一枚の中で艶が揃わない」「補修部が逆光で浮く」「触感が部分的に違う」が出たら、プロの道具と手順が必要な領域に入った合図です。
無塗装ヒノキの艶を“保つ”使い方
日常手入れで艶を落とす行動、育てる行動
無塗装は、塗膜で守られていない分、手入れが“艶の寿命”を左右します。
艶を落としやすいのは、強いアルカリ・強い溶剤・研磨剤入りクリーナー・硬いパッドでのゴシゴシ。
これらは表面の微細な整いを壊し、散乱を増やします。逆に艶を育てる行動は、乾拭きや、固く絞った水拭きを基本に、汚れを“削らずに回収する”こと。砂埃は最強の研磨剤なので、玄関や動線の砂を早めに回収するだけで艶の持ちは変わります。
ヒノキは柔らかい部類なので、椅子脚・キャスター・砂の組み合わせで一気に艶が飛びます。オフィスや住宅で無塗装を美しく保つなら、最初にフェルトや保護材、動線のマットなど“削らない設計”を入れるのが一番効きます。
無塗装のまま使うべきか、途中で仕上げるべきかの判断
無塗装の艶が魅力でも、用途によっては途中でオイルやワックス、あるいは別の仕上げを検討した方が良い場合があります。
判断基準は「汚れの種類」と「メンテの頻度」。例えば水や飲食のシミが頻繁に起きる環境、土足に近い環境、清掃がアルコールや薬剤中心の環境では、無塗装のままは管理コストが上がります。
一方、素足・スリッパ中心で、日常が乾拭き主体、汚れが限定的なら無塗装の“育つ艶”を楽しめます。
DIYでできる範囲は、部分的な軽いメンテや、簡易的な保護まで。広い面を均一に仕上げ直す、最初の艶感を残しつつ保護性能を足す、は設計と試験が要るため、プロ領域です。「無塗装で行けるか?」は素材の良し悪しではなく、生活(運用)との相性で決めるのが正解です。
“無節”が艶に与える価値と、見落としがちな注意点
無節は美しい、でも「表情の単調さ」が出ることもある
無節の吉野ヒノキは、線の通り方が素直で、面としての光沢が揃いやすい。その反面、空間によっては“均一すぎてのっぺり”に感じることもあります。
ここは好みですが、設計としては照明計画や壁の質感でバランスを取るのがコツです。無塗装の艶は光を拾うので、照明の位置や色温度で印象が大きく変わります。昼の自然光では上品でも、スポットが強いと反射が目立って落ち着かない場合もある。だから無節・無塗装は「材の美しさ」だけで決めず、空間の光環境とセットで判断すると失敗しにくいです。
特にオフィスや店舗は照明が強いことが多いので、現物サンプルを同条件で見ることが大事になります。
無塗装ヒノキで起きやすいトラブルと、先に決めるべき境界線
無塗装ヒノキは、凹み・擦り傷・黒ずみ・日焼けの変化が出やすい材です。これは欠点というより“出る前提の素材”で、許容できるかどうかが満足度を決めます。
DIYで対応できるのは、小さな毛羽立ちや軽微な擦り傷の馴染ませ程度。広範囲の黒ずみ、シミ、凹みが集中した場合は、部分補修の方が逆にムラが出て目立つことがあります。
境界線として「点の補修で済むのか/面で揃え直す必要があるのか」を早めに判断するのが重要です。点で済むうちは自分で触ってもいい。面で揃えるなら、道具・手順・仕上げの再現が必要で、プロに任せた方が結果として“綺麗に、早く、安く”なることもあります。無塗装の艶は魅力的ですが、その艶を守るには“触り方のルール”が必要です。
よくある質問
- Q無塗装の吉野ヒノキは汚れやすいですか?
- A
無塗装のヒノキは確かに塗膜仕上げと比較すると水分や油分の影響を受けやすい素材です。
ただし、吉野ヒノキのように目が詰まった良材は吸い込み方が穏やかで、急激なシミになりにくい特徴があります。また、軽度の汚れであれば部分的なペーパー掛けで補修できる点も無垢材の利点です。完全防汚を求めるなら塗装、素材感を優先するなら無塗装という選択になります。
- Q無塗装フローリングは経年でどのように変化しますか?
- A
吉野ヒノキは時間とともに淡い飴色へと変化します。
特に紫外線が当たる部分はゆっくりと色味が深まり、木目のコントラストも落ち着いてきます。無塗装の場合は表面に膜がないため、変化がより自然に現れます。これは劣化ではなく、ヒノキ特有の酸化反応による成熟です。均一な変化を望む場合はカーテンやラグの配置も計画することが大切です。
- Q無塗装とオイル仕上げはどちらが良いですか?
- A
用途と暮らし方によって最適解は異なります。
無塗装は素材の香りや触感を最大限に楽しめますが、日常メンテナンスが前提になります。一方、自然系オイル仕上げは撥水性を持たせつつ木の呼吸を妨げにくいバランス型の選択肢です。小さなお子様やペットがいる家庭では、最初から薄くオイルを入れておく方が管理しやすい場合もあります。
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