無垢フローリングと樹脂ワックスの相性問題
天然木の美しさと温かみを持つ無垢フローリングは、多くの住宅で採用される人気の建材です。しかし、無垢材の床はメンテナンスが必要であり、正しい方法を知らないとトラブルの原因になります。その代表的なものが、「樹脂ワックスを誤って塗ってしまう」というケースです。
私たちエコロキアにも、年に数件は「無垢フローリングに市販のワックスを塗ったら大変なことになった」というご相談が寄せられます。工務店や清掃業者からの依頼もあれば、個人の方から直接「どうにかなりませんか?」とご相談いただくこともあります。
市販の樹脂ワックスは「手軽に床をピカピカにできる」と宣伝されていますが、そのほとんどは合板フローリングやクッションフロアを対象としています。オイル仕上げや無塗装の無垢フローリングには不向きであり、むしろ床材を傷める原因になるのです。
樹脂ワックスがNGな理由
樹脂ワックスの容器には必ず「白木またはオイル仕上げの床には使用しないでください」と記載されています。しかし、多くの方は注意書きを見落としてしまい、ホームセンターなどで手軽に購入して塗ってしまうのです。
無垢材にワックスが浸透する
合板フローリングと異なり、無垢フローリングは木そのものが表面に現れています。そこに樹脂ワックスを塗布すると、木目の隙間から樹脂成分が内部に染み込み、表面にムラや白濁が生じます。
塗膜の相性が悪い
オイル仕上げの無垢フローリングは、木が呼吸できるように浸透性の塗料を使っています。そこに樹脂ワックスを重ねると、油分とワックス成分が反発し、不均一な光沢やべたつきが発生します。
将来的なメンテナンスにも影響
ワックスは木材にしみこんでしまうため、一度塗布すると簡単には除去できません。そのため、将来的に再塗装や研磨を行う際にも手間が増え、余計なコストが発生してしまうのです。
復旧作業の流れ
実際に「無垢フローリングに誤ってワックスを塗ってしまった現場」で行った復旧作業の流れをご紹介します。これは一見単純に見えますが、実際には非常に手間と人手のかかる作業です。

1. ワックス剥離剤でふやかす
まずはアルカリ性のワックス剥離剤を床に塗布し、ワックスを柔らかくします。この工程はスピードが重要で、剥離剤が乾いてしまうと逆に木材を痛めてしまう可能性があります。オークやチェスナット、杉といったタンニンを多く含む樹種では、黒く変色するリスクもあるため、慎重な作業が必要です。

2. スクレイパーで削り取る
柔らかくなったワックスをスクレイパーで丁寧に削り取ります。力を入れすぎると木材そのものを傷つけてしまうため、少しずつ地道に進めていきます。この段階で大量のワックスが除去されますが、木目に染み込んだ部分はまだ残っています。

3. サンディングで表面を整える
ワックス剥離だけでは十分ではないため、次にサンダーを使って床の表面を削ります。木の素地を露出させ、ワックスの染み込みによるムラを消していきます。この工程を経てようやく床本来の美しさが戻ってきます。

4. 最終仕上げ
最後に、自然塗料かウレタン塗料を選び直し、床に適切な仕上げを施します。これによって、再び安心して長く使える状態に戻すことができます。
復旧作業の大変さとコスト
「ワックスを剥がすだけ」と思うかもしれませんが、実際には非常に大掛かりな作業となります。
- 施工規模:3LDK全室(無垢フローリング)
- 人員:職人5名+スタッフ2名
- 施工期間:約3日間
これだけの人手と時間をかけなければ完全には復旧できないのです。つまり「たかがワックスを間違って塗っただけ」であっても、復旧には大きな労力とコストが必要になります。
無垢フローリングの正しいメンテナンス
では、無垢フローリングはどのようにメンテナンスすればよいのでしょうか。
オイル仕上げの場合
基本的には定期的にオイルを塗り重ねることで美しさを保ちます。水染みや小傷も、サンドペーパーで軽く研磨してからオイルを再塗布すれば目立たなくなります。
無塗装の場合
普段は乾拭きで十分ですが、生活汚れが気になる場合には専用のソープやワックスを使用するのが基本です。
ウレタン仕上げの場合
比較的メンテナンスは楽で、樹脂ワックスを塗布しても問題ありません。ただし、部分的な補修や再塗装は難しく、経年で劣化した場合は全面研磨が必要になることもあります。
無垢材を長く使うために
無垢フローリングは「メンテナンスフリー」ではありません。しかし、適切に手をかけることで、数十年にわたり住まいを彩り続けてくれます。むしろ、年月とともに深みを増す経年美こそが無垢材の魅力です。
誤った知識で取り返しのつかないことにならないよう、施工前やメンテナンス前にはぜひ専門家にご相談ください。


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