たまにはちゃんと役に立ちそうなコトも書いておかねば!…と云うワケで本日はこれからマンションの床を無垢フローリングに替えようと思っている方に10のアドバイスとして、遮音フローリング、遮音マット、遮音束などについて少しプロ向けの目線でご説明致します。
1.マンションの管理規約を確認する
殆どの分譲マンションには管理組合が定める管理規約があり、その項目に階下への遮音の規定があるはずです。
色々な書き方があるでしょうが、概ねLL-45等級とかΔLL(I)-4などをクリアする床材と決められているかと思いますが、詳しくは「遮音等級のLL-40、LL-45、ΔLL(I)-4などの簡単解説」をご確認下さい。
階下のない1階などでは規定がない場合もありますが、この管理規約を無視して施工をすると階下の居住者に迷惑が掛かりますし、トラブルになった場合、貼り替えなければなりませんので事前にご確認下さいね。
何処の商品とはこのブログで書きませんが、某社の遮音無垢フローリングのデータを拝見すると250Hz、500HzでΔLL-4を下回って、『ΔLL-3(推定LL-45等級)』として販売されていますが、これは管理組合がデータの読み方を分からないだけで、数値としては基準値を下回っているため、分かる人が見てツッコまれたら大問題になるのでは…と他人事ながら怖くなります。
2.遮音性能データには種類がある
現在、公的機関で遮音の実験を行っているのは、一般財団法人建材試験センター (JTCCM)や、一般財団法人日本建築総合試験所(GBRC)など各地に試験場がありますが、それぞれの試験場の環境(スラブの性能)によって試験結果が異ならないように、2007年10月に床衝撃音レベル低減量の測定方法を定めたJIS規格が改定され、それまで使用されてきた推定L等級(LL-45やLL-40と云うようなモノ)に代わって、現在の新たな床衝撃音低減性能の等級表示(ΔLL(I)-4と云うようなモノ)が採用されています。
これらの公的な第三者機関による遮音性能評価の他に、メーカー独自による自主試験データもあります。
信憑性と云う点では公的な第三者機関による遮音性能評価の方が高いですが、これも前述したように管理組合がデータの読み方を知らなければ、どちらでも同じコトでしょう。
これもまた違う某遮音マットも自主試験データではLL-40の基準をクリアしていると云って販売されていますが、実際に公的機関の遮音実験をしたら到底基準値をクリアできない…なんて云われているような商品もあります。
3.下地の状態によって施工方法は異なる
リノベーションをする際に、コンクリート下地が出るまで既存フロアを解体すれば遮音マットを使用ができます。
またコンクリート下地から充分な高さが取れるようであれば遮音性能のある束(つか)を立てて防音二重床工法が可能です。
しかし、コストダウンをするためには解体撤去をせずに既存フロアの上に下地合板を貼って、その上にフローリングを貼る現場は結構多く、「既存フロアに遮音性能があるので大丈夫」と云う理論なのですが、そこにビス留めしてしまうと音が伝わってしまうため、従来の遮音性能が得られないためオススメ出来ません。
4.スラブからどのぐらいの高さが必要か確認する
販売されている商品によって厚みは異なりますが、一般的に遮音マットを使用する場合、床仕上げ高は無垢フローリングの厚み(15mm)を含んで約37~40mm程度の高さが必要です。
防音二重床工法をする場合は更に高さが必要で床仕上げ高は無垢フローリングの厚み(15mm)を含んで約140~150mm程度の高さが必要です。
合板の遮音フローリングは厚みが12mm程度なので、前述した工法と比較して非常に薄いのですが、いわゆるフワフワとした踏み心地になってしまいます。
5.室内高が変わるとドアや掃出しなどの調整が必要
リノベーションの場合、既存フロアと同じ厚みで仕上げるコトが出来れば不要なはなしなのですが、それよりも厚みが増した場合はドアのアンダーカットや玄関框などのサイズ変更が必要になります。
6.無垢フローリングを躯体には完全に固定できない
無垢フローリングの標準施工要綱では下地合板、そしてその下の根太に釘打ちと接着剤で固定する施工方法ですが、マンションの躯体に釘などで固定してしまうとそこから音が伝播してしまうため、遮音マットや遮音束などを介して「その上に置いている」と云う状態です。
そのため、オーク(ナラ)やアジアン・ウォルナットなど伸縮しやすい無垢フローリングは突き上げなどのトラブルが発生しやすい傾向にあります。
マンションのリノベーションで伸縮しやすい樹種を選ぶ場合は複合フローリングにするか、もしくは施工時にしっかりとクリアランスを設けて施工するようにご注意下さい。
7.「遮音フローリング」と「遮音マット」と「遮音束」の違い
遮音フローリング
遮音フローリングはフローリング裏面に遮音材が付いており、メリットは総厚が薄くできることですが、デメリットはフワフワとしたあの歩行感。
遮音マット
遮音マットはスラブ上に下地として敷くマットで、その上にフローリングを施工します。
そのためメリットはしっかりとした歩行感ですが、デメリットはコストと総厚が増すことです。
遮音束
遮音束はサスペンションのような束で、その上に下地合板を施工して、その上にフローリングを施工します。
メリットは更にしっかりとした歩行感と床下に配線、配管が容易な点ですが、デメリットは更にコストと総厚が増すことです。
8.遮音無垢フローリングは割れる可能性がある
遮音材は柔らかいウレタンやゴムなどの素材で出来ており、その上に薄い木の板を貼っているようなものなので、フワフワとした歩行感のため、樹種によっては杢目に沿って割れが生じるコトがあります。
割れにくくする樹脂塗料で表面をコーティングする方法もありますが、そうすると「無垢材らしさ」と云う最も重要なポイントが損なわれてしまうので、開発中の僕たちも悩みどころです。
まぁ割れれば接着剤で補修すれば簡単に直すコトが出来るので、「無垢材らしさ」を重要視するのであれば、補修方法をご理解の上お使い頂くのが一番かも知れません。
9.床暖房と遮音マットは併用できないものもある
遮音マットに使用されている素材が床暖房の熱に対応しているものもありますが、対応していないものもあるようで、確かにウレタンやゴムが長時間高温に晒されると劣化するでしょうし、床暖房の熱の伝導も相当悪くなるので併用する際はメーカーにご確認の上、採用の是非を決めた方が良いでしょう。
10.遮音フローリングは冷たくなりやすい
遮音フローリングはコンクリートから最も近くなり、特に合板の遮音フローリングや割れを防止するために樹脂塗料でコーティングされたフローリングは冬場冷たくなりがちです。
オススメは遮音束を使用してコンクリートとの間に空気層がある施工方法か、もしくは遮音マットを用いて無垢フローリングを使用する施工方法です。
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