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無垢フローリングの黒いシミ、カビじゃない!? 鉄染みの正体と正しい対処法

無垢木部を養生して鉄染み除去作業を行う様子。オーク建具の黒いシミ対策前の状態。 オーク(ナラ / 楢)
鉄粉による黒いシミが発生したオーク建具まわり。養生をしっかり行い、これからシュウ酸による除去作業を開始します。

黒い斑点やシミ、原因はカビとは限らない

ある日、無垢フローリングや木製の建具、家具の表面に黒い点やシミが浮かび上がることがあります。多くの方は「カビが生えたのでは?」と驚かれますが、実はそれがカビではない場合も多いのです。

天然木は生きた素材であり、空気中の水分や金属との接触など、さまざまな要因で化学的に反応します。その結果として“黒ずみ”や“変色”が起こることがあり、見た目はカビそっくりでも原因はまったく異なります。

オーク材に現れた黒い鉄染みの拡大写真。カビではなく金属との化学反応による黒ずみ。
オーク(ナラ)特有のタンニン成分が鉄粉と反応し、黒カビのようなシミが発生。これが「鉄染み」と呼ばれる現象です。

では、木材の黒いシミはどんな要因で発生するのでしょうか。

木材に現れる黒いシミの主な原因

黒ずみの原因は4つ

木材の黒い汚れには、主に以下の4つの原因が考えられます。

  1. カビの発生(湿度や通気不良による微生物の繁殖)
  2. アルカリによる変色(アルカリ焼け)
  3. 鉄分との化学反応による鉄染み
  4. 植物成分(サポニンなど)による変色

これらはそれぞれ性質が異なり、見た目だけでは判別が難しいため、誤った処理をするとシミが悪化するケースもあります。特に「鉄染み」は、施工現場などで金属粉が付着した際に起こりやすい現象です。

今回の事例:オーク材に発生した黒い斑点の正体

今回のケースでは、オーク(ナラ / 楢)の建具に点状の黒いシミが発生しました。一見するとカビのようでしたが、詳しく調べると原因は鉄粉による化学反応でした。

施工時に軽鉄下地工事(LGS工事)が行われ、近くで鉄を切断・加工した際の鉄粉が木部に付着。これがオークに多く含まれるタンニンやフェノール酸と反応し、黒色の「タンニン鉄化合物」や「フェノール鉄化合物」が生成されたのです。

この化学反応による黒ずみを鉄染み(てつじみ)と呼びます。見た目は黒カビにそっくりですが、実際には金属と木の化学変化です。

鉄染みを除去するには?「シュウ酸」による中和処理

表面の塗膜をまず取り除く

鉄染みは、ただ拭くだけでは落ちません。
オイルやウレタンなどの塗膜がある場合は、まずその塗膜をサンドペーパーやサンダーで研磨して剥がす必要があります。
塗膜の上からでは薬剤が木の繊維に届かないため、必ず素地の状態に戻すことが重要です。

シュウ酸で鉄分を中和する

塗膜を除去したら、シュウ酸(Oxalic Acid)を使用します。
シュウ酸は弱い有機酸で、鉄と反応して水溶性に変える作用を持ち、黒ずみを化学的に分解・除去します。

鉄染み専用クリーナー「黒鉄しみ取り」のボトル。シュウ酸を主成分とした木部用除去剤。
シュウ酸を含む木材専用の鉄染み除去剤「黒鉄しみ取り」。DIYでも扱いやすく、鉄分による黒ずみを効果的に中和します。

処理手順の一例:

  1. シュウ酸を4〜5%程度に水で希釈する
  2. 筆や布で黒ずみ部分に塗布
  3. 数分間放置して反応を待つ
  4. 水拭きで中和液を除去
  5. 必要に応じて数回繰り返す
  6. 完全乾燥後、再研磨・再塗装

オークなどタンニンを多く含む木材では、酸性によって一時的に赤っぽく見えることもありますが、乾燥後に再研磨すればほぼ元の色調に戻ります。

シュウ酸はどこで手に入る?

一般販売は減少傾向、入手が難しい現実

かつては薬局でも販売されていたシュウ酸ですが、現在では薬事法や危険物規制の関係で入手が難しくなっています。特に個人での購入は制限される場合があり、実際に兵庫県東灘区周辺でも取り扱い薬局は全くありませんでした。

専用クリーナーの活用が現実的

DIYでのメンテナンスの場合、市販の鉄染み専用クリーナーを使うのがおすすめです。
写真の「黒鉄しみ取り」は、シュウ酸を含む業務用クリーナーで、木部の鉄シミ除去に特化しています。
原液をそのまま塗るタイプもありますが、木材への影響を考慮してテスト施工を行ってから本番処理するのが安全です。

オーク材の鉄染み除去作業中。筆でシュウ酸を塗布し、黒ずみ部分を中和している様子。
オーク材に発生した鉄染みを、筆を使って丁寧にシュウ酸を塗布して除去。木目を傷めないよう細部まで慎重に処理を行います。

シュウ酸は劇薬。DIYにはリスクも

シュウ酸は有機酸とはいえ、人体や金属に対して腐食性がある“劇薬”です。誤って皮膚や目に付着すると炎症を起こす危険があり、使用時には必ず手袋・ゴーグル・換気が必要です。

また、塗布後の水拭きが不十分だと酸が残留し、後に変色や塗装ムラを引き起こすこともあります。さらに、再研磨と再塗装の工程を正しく行わないと、逆に木目が荒れたり艶が不均一になってしまうことも。

つまり、「黒ずみが落ちた」と思っても、仕上げ次第では美観を損なうリスクがあるのです。

専門業者に依頼するのが最も安心な方法

今回の事例では、エコロキアの木部再生サービス「ムクリペ」の施工チームが対応し、シュウ酸による処理と、再研磨・再塗装によって見事に黒ずみを除去しました。

ムクリペでは、木の種類や塗装の状態を見極めながら、最適な薬剤と研磨方法を選定します。
特に、木材の内部に染み込んだ鉄分や酸化物まで除去するノウハウは、DIYでは難しい領域です。

木の黒ずみ=劣化ではない。正しい処理で再生できる

木材に現れる黒い斑点は、必ずしも腐敗や劣化を意味するものではありません。鉄染みのような化学反応が原因であれば、木材そのものの強度は保たれたままです。正しい手順で処理すれば、美しい木目を取り戻すことができます。

無垢材の変化を“敵”ではなく“個性”として楽しむ

  • 木材の黒いシミはカビだけが原因ではない
  • 鉄粉との化学反応による「鉄染み」が多い
  • シュウ酸で除去できるが、扱いには注意が必要
  • DIYよりも専門業者に依頼するのが安心

無垢材は生きて呼吸する素材。
時間の経過とともに変化し、それが唯一無二の表情を生み出します。
その変化を恐れず、丁寧に向き合うことこそが、“本物の天然素材と暮らす”という贅沢なのです。

黒いシミ、あきらめないでください。木は、蘇ります。

無垢フローリングや木製建具の黒ずみ、諦めていませんか?
そのシミ、カビではなく「鉄染み」や「化学変化」である可能性があります。正しい知識と技術を持つプロが対応すれば、驚くほど綺麗に再生できます。
DIYでは難しい化学的処理も、経験豊富な職人が素材や塗装の種類を見極め、安全で確実な方法で施工します。
天然木は手をかけるほどに応えてくれる素材。
“傷ついたら終わり”ではなく、“手入れをすることで育つ”のが無垢材の魅力です。
黒いシミや変色でお悩みの方は、ぜひ一度エコロキアにご相談ください。

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